原昭夫

原 昭夫

原 昭夫（はら あきお）氏は、1942年に東京都に生を受けた、日本の都市計画家および地域プランナーです。長年にわたり、自治体での実務経験と研究・教育活動を通して、日本のまちづくり分野に多大な貢献をしてきました。

経歴と活動

原氏はそのキャリアを公務員としてスタートさせ、東京都庁をはじめ、沖縄県名護市役所、そして世田谷区役所といった主要な自治体で勤務しました。これらの職場では、住宅政策、まちづくり全般、建築、都市デザインといった幅広い分野で専門性を磨き、政策の立案から具体的なプロジェクトの実施に至るまで、多岐にわたる業務に深く関わりました。特に、世田谷区役所では住宅政策部長という責任ある立場を務め、住民の暮らしに直結する住宅問題や、良好な市街地環境の整備に尽力しました。この公務員としての経験は、その後の原氏の活動における実践的な視点の礎となっています。

自治体での勤務を経て独立した原氏は、自治体まちづくり研究所を設立し、その所長に就任しました。この研究所を拠点に、地方自治体や地域住民と連携しながら、地域特性を活かした計画策定や、住民参加によるまちづくりの推進に取り組んでいます。自治体職員時代の経験を活かし、机上の空論に終わらない、現場に即した実現可能な計画づくりを重視しています。

また、次世代の専門家育成にも積極的に関与しており、千葉大学工学部都市環境システム学科の客員教授として、実践で培った知識やノウハウを学生たちに伝えています。都市環境システムという学際的な視点から、持続可能な地域社会のあり方について指導を行っています。専門分野における高い知識と技術を示すものとして、技術士（建設部門、都市および地方計画）および一級建築士の資格を有しています。

専門分野と著作

原氏の専門は、都市計画、地域プランニング、住宅政策、まちづくり、都市デザインなど多岐にわたりますが、特に住民が主体となる参加型のまちづくり、そして地域の「風景」を重視したデザインに特徴があります。これらの思想は、多くの著作としてまとめられています。

主な著書

『都市デザインと空間演出』（共著、1989年、学陽書房）
『あなたのまちをデザインする61の方法』（共著、1992年、日本コンサルタントグループ）
『風景デザイン─感性とボランティアのまちづくり』（1999年、学芸出版社）
『都市計画の地方分権─まちづくりへの実践』（1999年、学芸出版社）
『自治体まちづくり─まちづくりをみんなの手で』（2003年、学芸出版社）

これらの著作からは、都市や地域の計画が単なる物理的な空間構成に留まらず、そこに暮らす人々の営みや文化、そして地域を取り巻く自然環境との調和を重視する原氏の姿勢がうかがえます。特に、『自治体まちづくり─まちづくりをみんなの手で』では、地方分権が進む現代において、自治体職員や住民がいかに主体的にまちづくりに関わるべきかについて、具体的な提言を行っています。また、『風景デザイン』では、地域の景観を単なる装飾としてではなく、地域独自の個性や歴史、文化を映し出すものとして捉え、その維持・創造に住民の感性やボランティア活動が不可欠であることを訴えています。

原氏の活動と著作は、今日の日本の地域社会が直面する様々な課題、例えば人口減少、高齢化、地域経済の衰退といった問題に対して、地域内部からの力強い取り組みを促すための示唆に富んでいます。理論と実践を結びつけ、住民と共に歩むまちづくりの重要性を説き続けています。

関連項目

自治体学会

• ---

もう一度検索