原発特別警備部隊

原発特別警備部隊とは

原発特別警備部隊は、原子力発電所をはじめとする原子力関連施設の警備を専門とする警察の部隊です。これらの部隊は、各都道府県警察本部の機動隊に設置され、特に原子力発電所が立地する地域では重要な役割を担っています。

歴史的背景

2001年のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、原子力関連施設の警備体制が強化されました。当初は銃器対策部隊が24時間体制で警戒にあたっていましたが、2002年のFIFAワールドカップ開催に伴い、管区機動隊が動員されることになり、その代替として、各都道府県警察機動隊に「原子力関連施設警戒隊」が配備されました。この際、人員が不足する県には全国から応援部隊が派遣されました。当初、これらの部隊は臨時の編成でしたが、2003年のイラク戦争に伴うテロ警戒強化の際にも再編されました。

編成と装備

現在、原発特別警備部隊は、全国16道府県警察本部の機動隊に編成されています。基本的には、管区機動隊の隊員が任期制・交代制で警戒にあたります。これらの部隊は、警察庁により銃器対策部隊として位置づけられており、短機関銃や狙撃銃、特型警備車などの装備に加え、自動小銃、NBCテロ（核、生物、化学兵器テロ）に対応するための化学防護服やマジックハンドなどの特殊装備も備えています。

これらの部隊の運営費は全額国庫負担であり、電力会社は費用を負担しません。当初は「原子力関連施設警戒隊」、その後「原発特別警備隊」と呼ばれるようになりました。

また、原子力関連施設の多くは海に面しているため、海上保安庁との連携も不可欠です。巡視船艇による巡回や、発電所によっては巡視船の常時展開やモーターボートの配備も行われています。2016年には、海上保安体制強化に関する方針が閣議決定され、原発等テロ対処体制の強化も盛り込まれました。これにより、2020年代には、若狭湾を含む海域を管轄する海上保安部に大型巡視船が配備され、海上からの警備体制も強化されました。

福井県警察原子力施設警備隊

福井県警察では、2000年に嶺南機動隊が発足しました。当初は、嶺南地域の警備全般に対応していましたが、2004年に同隊内に原子力関連施設警戒隊が設置され、約70名体制のうち38名が専従となりました。2013年にはさらに増員され、2014年時点で全国唯一の専従部隊となっていました。嶺南機動隊は、原子力発電所施設の警戒活動が主な任務ですが、それ以外の災害や事案が発生した場合は、福井市にある県警機動隊が対応します。

この部隊の経費も国から支出されています。2020年3月には、テロ抑止効果を高めるため、嶺南機動隊は原子力施設警備隊に改称し、原子力施設の警備活動に専念することとなりました。福井県警の原子力施設警備隊は、専門性と高い警備能力を有し、原発施設の安全確保に重要な役割を果たしています。

その他の関連情報

原発特別警備部隊は、原子力施設の安全を確保するために重要な役割を果たしています。テロ対策だけでなく、自然災害など、様々な脅威に対応するための訓練も行われています。また、国際的なテロ情勢や最新の脅威動向を踏まえ、常に警備体制の見直しや強化が行われています。

参考文献

警察庁 編「原子力発電所をめぐる警備情勢」『焦点』第282号、2013年
警察庁 編「特集　国際テロ対策」『平成28年警察白書』、2016年
警察庁警備局長『機動隊の専門部隊の精強化について』、2019年
中島敏「急がれる海上保安体制の強化=警備」『世界の艦船』第933号、2020年
* 矢野義昭「原発のテロ対策は十分か？第1部：日本の警備体制を検証する」『JBpress』、2011年

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