原種

原種（げんしゅ）について

原種という言葉には、大きく分けて2つの意味があります。

1. 種子としての原種

種子としての原種は、主に米、麦、大豆などの主要農作物において、優良な種子を安定的に生産するための重要な役割を担っています。これは、主要農作物種子法に基づいて、各都道府県が原々種や原種を生産する体制が整備されています。

具体的には、以下のような流れで種子が生産されます。

1. 育種家種子: 品種を開発した農業試験場などの育成機関から提供される種子です。
2. 原々種: 育種家種子を基に、原々種圃で生産される種子です。
3. 原種: 原々種を原種圃で播種し、生産される種子です。
4. 一般種子: 原種を基に、農業生産団体などが設置した採種圃で生産される種子で、農業者が栽培に用います。

このように、育種家種子から原々種、原種、一般種子へと段階的に種子が生産されることで、品質の高い種子が安定的に供給されるようになっています。また、原々種と原種を合わせて「原種」と呼ぶ場合もあります。

2. 園芸品種に対する原種

園芸品種に対する原種は、品種改良や種間交配が行われる前の、野生種を指します。栽培種が改良される前の、自然のままの姿をした植物のことです。

園芸品種は、より美しい花や大きな実を付けるように改良されているため、原種に比べると見劣りする点が多くあります。例えば、花が小さかったり、色がくすんでいたり、開花期間が短かったりします。しかし、原種には、丈が低く野趣に富むという魅力があり、それを好む人も少なくありません。

特に、海外の草花では、原種やそれに近いものが山野草として流通することがあります。例えば、チューリップの原種には、花弁が非常に長いものや、葉に模様があるものなど、独特の魅力があります。また、シクラメンの原種には、園芸品種に比べて耐寒性が強かったり、香りが良いものがあります。バラの原種は、四季咲き性はありませんが、花が立派で豊かな芳香を持つものが多いです。

原種は、一般的に栽培種よりも様々な環境条件に耐える力が強く、そのため、品種改良の素材として活用されることがあります。品種改良の過程では、特定の性質だけが選ばれるため、原種が持つ多様な遺伝子が失われてしまいがちです。そのため、新しい性質を求める場合には、原種から探すのが効果的な場合があります。

ただし、ここでいう「原種」とは、野生の個体をそのまま持ち込んだものだけを指すのではありません。野生の個体群から採取され、栽培された個体から自家受粉や交配によって得られた個体も含まれます。この過程で、地域変異などが無視された場合、野生には存在しない形質を持つ個体が出現することもあります。特に、野生の個体群から採取される段階で、人為的な選別が行われている場合には、このような現象が起こりやすくなります。

まとめ

原種という言葉は、種子としての意味と園芸品種に対する意味の2つの側面を持っています。種子としては、優良な種子生産の基礎となるものであり、園芸品種としては、品種改良前の野生種を指します。原種は、その多様な遺伝子や環境への適応力から、品種改良の重要な資源としても注目されています。

関連項目

* 奨励品種

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