厳正拘束名簿式

厳正拘束名簿式とは

厳正拘束名簿式（Closed list）は、比例代表制の一形式であり、選挙において投票者が直接候補者にではなく、政党に投票する仕組みを指します。この方式では、政党が事前に立候補者リストを作成し、その順位を固定するため、候補者の当選可能性は常に名簿の位置によって決まります。選挙において候補者の支持獲得を求められないため、世論の影響を受けにくい一方で、当選を望む候補者に対しては不利な点も少なくありません。

概要

厳正拘束名簿式では、政党があらかじめ決定した名簿に基づいて議席が配分されるため、上位に位置する候補者は議席取得が容易になります。しかし、名簿の下位に位置する候補者は議席獲得が非常に難しくなります。このように名簿の順位が直接的に候補者の当落を左右するため、政党内の序列が重要な要素となります。日本においては、1983年から1998年までの参議院議員通常選挙で採用されていました。

日本の参議院では、一票の格差に起因する問題に対応するため、新たな合同選挙区が設定され、特定の県の代表を確実に選出するための仕組みが導入されました。その結果、2019年の第25回参議院選挙からは、政党によっては「特定枠」として拘束名簿式を採用することが可能となりました。この特定枠に入った候補者は、政党票としてカウントされるため、各候補者による選挙運動が制限され、結果的に名簿上の順位に基づいて当選を狙う仕組みが組み込まれました。

批判

厳正拘束名簿式には、特定の政党内の幹部や名簿作成者が大きな権力を持つという問題があります。こうした権限を持つ人物が候補者リストを管理し、名簿に載った候補者はその意向に大きく依存するため、内部政治において不公平な力関係が生まれることがあります。特に日本では、自由民主党が候補者に対して党員集めのノルマを設け、達成度によって名簿順位を決める手法をとっていましたが、これにより経済的な要因や支持団体の影響が強くなり、名簿上の不平等を生じさせる結果となりました。

こうした問題が顕在化する中で、2000年には久世公堯元金融再生委員長が関与したスキャンダルが発生し、自民党の比例名簿に不正に位置づけられた事が指摘されました。この騒動を受け、厳正拘束名簿式は非拘束名簿式に改められ、より透明性のある選挙制度を目指すこととなりました。

まとめ

厳正拘束名簿式は、有益な投票方式と見なされる一方で、名簿の管理者に多大な権限を与えることから、政治的な不透明性や不平等や不正を生む要因ともなり得る複雑な制度です。民主主義の実現を目指す上で、様々な選挙制度がもたらす課題への適切な対応が求められます。

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