参宮急行電鉄デト2100形電車

参宮急行電鉄デト2100形電車

参宮急行電鉄デト2100形電車は、1930年（昭和5年）に参宮急行電鉄が4両製造した無蓋電動貨車です。親会社である大阪電気軌道（大軌、後の近畿日本鉄道）の路線に乗り入れ、貨物輸送に活躍しました。

概要

デト2100形は、当時の私鉄向け無蓋電動貨車としては長大な車体を持ち、独特な外観が特徴でした。製造は川崎車輛兵庫工場が担当し、デト2100からデト2103までの4両が製造されました。

車体

全長17,100mm、最大幅2,500mmの車体は、リベット組み立ての鋼製で、両端に特徴的な乗務員室を備えていました。一方の乗務員室は丸屋根、もう一方は浅い切妻屋根で、それぞれ3枚窓の非貫通構造でした。前照灯は、丸屋根側は妻面幕板中央、切妻屋根側は屋根の上辺が灯具の中心と重なるように取り付けられていました。また、妻面下部には鋳鋼製のアンチクライマーが設置されていました。

乗務員室間の荷台は無蓋で、最大荷重20tでした。荷台には背の低い木製あおり戸が設置され、垂下防止のため車体両側面の床下にトラス棒が取り付けられていました。荷台の丸屋根乗務員室寄りには、パンタグラフ台が設置されていました。

主要機器

主要機器は、同時期に設計された区間運転用旅客車であるデニ2000形と共通のものが多く採用されました。

主電動機

東洋電機製造TDK-542-A直流直巻整流子電動機を各台車に2基ずつ搭載し、吊り掛け式で駆動しました。歯数比は3.15で、定格速度は47.5km/hでした。

主制御器

日立製作所PR200を採用しました。

ブレーキ

M三動弁によるM自動空気ブレーキ（AMMブレーキ）と手ブレーキ装置を搭載していました。直通ブレーキ動作も可能でした。

台車

住友製鋼所KS-33L鋳鋼組立釣り合い梁式台車を装着していました。軸距は2,450mmでした。

運用と改造

新造以来、大軌の高安車庫に配置され、参宮急行電鉄唯一の電動貨車として重用されました。しかし、有蓋貨車の必要性が生じたため、1931年8月にデト2102が、1933年4月にデト2103が、それぞれ有蓋貨車に改造され、デワ2800形2800・2801となりました。

有蓋貨車への改造では、荷台部に柱を立て、鋼板を張って側板とし、屋根を延長して両端とも丸屋根構造としました。側面には1,500mm幅の片開扉が2箇所ずつ設置され、換気用としてガーランド式通風器が屋根に6箇所、側板の腰部に4箇所ずつ設置されました。デワ2800とデワ2801では、外観に差異があり、デワ2800は外吊り式扉、デワ2801は戸袋を持つ通常構造で、側面には柱がリブ状に露出していました。

1941年の参宮急行電鉄の大阪電気軌道との合併と、それに伴う関西急行鉄道への改組の際、形式称号の整理が行われ、以下の通り改番されました。

デト2100・2101→モト2700形2700・2701
デワ2800・2801→モワ2800形2800・2801

戦後、1963年8月20日の形式称号改正で、0起番のナンバリングが廃止され、1起番に変更されました。この際、改番を行う車両数を最小限に抑えるため、以下の改番が実施され、2形式共に車両番号の順序が反転しました。

モト2700→モト2702
モワ2800→モワ2802

さらに、1970年3月2日に電動貨車各形式の2桁形式への改番が実施され、本形式も以下の通り改番されました。

モト2701・2702→モト90形91・92
モワ2801・2802→モワ80形81・82

その間、ブレーキ弁のA動作弁への交換によるA自動空気ブレーキ（AMAブレーキ）への改造や、制御器の電動カム軸式自動加速制御器への交換、あおり戸の鋼板化などが実施されました。

1970年代後半まで運用されましたが、老朽化により、1976年3月29日にモワ81・82が、1981年3月19日にモト91・92が廃車となり、全車解体されました。

参考文献

鉄道史資料保存会『近鉄旧型電車形式図集』、鉄道史資料保存会、1979年
近鉄電車80年編集委員会『近鉄電車80年』、鉄道史資料保存会、1990年
『関西の鉄道 No.33』、関西鉄道研究会、1996年
『鉄道ピクトリアル No.727 2003年1月臨時増刊号』、電気車研究会、2003年
藤井信夫『車両発達史シリーズ8 近畿日本鉄道 一般車 第1巻』、関西鉄道研究会、2008年

外部リンク

鉄路の名優 電動貨車 - 近畿日本鉄道

関連項目

* 近畿日本鉄道の車両形式

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