又野誠治

又野誠治：松田優作に憧れた俳優の生涯

1960年11月25日生まれの又野誠治氏は、山口県岩国市出身の俳優です。イタリア人の父親と日本人の母親を持つ彼は、幼少期から格闘技に親しみ、少林寺拳法、剣道、柔道はそれぞれ二段の腕前でした。さらにボクシングも得意としていたという、恵まれた体格と運動神経の持ち主でした。

又野氏の俳優としてのキャリアは、松田優作氏への強い憧憬から始まりました。高水高等学校卒業後、上京した彼は、1982年春に文学座22期生として入座。文学座付属演劇研究所を修了したのち、1983年7月、日本テレビのテレビドラマ『太陽にほえろ！』でブレイクを果たします。8代目新人刑事・澤村誠（ブルース刑事）役としてレギュラー出演を果たしたのです。

同郷出身で『太陽にほえろ！』で既に人気を博していた松田優作氏とよく似た雰囲気と容姿、そして鍛え上げた肉体から、当初は松田優作氏が演じる柴田純（ジーパン刑事）役と比較されるなど大きな注目を集めました。しかしながら、他の新人刑事役を演じた俳優のように、一気にスターダムにのし上がることはなく、番組終了までにはその機会を得られませんでした。番組最終回では殉職寸前まで追い詰められましたが、最終的には生存し、続く『太陽にほえろ! PART2』にも出演を果たしました。

『太陽にほえろ！』終了後も、映画『「さよなら」の女たち』などに出演。その後は、主にオリジナルビデオ作品で活躍の場を広げ、1990年には『兇悪の紋章』で初主演を果たします。数々のビデオ作品や刑事ドラマで主演を務め、悪役としても強烈な個性と存在感を示しました。

晩年には、東京都杉並区で飲食店「Aサイン」を経営していましたが、2004年3月23日、43歳の若さで急逝しました。前年に18歳年下の女性と結婚し、その年の1月末には息子を授かったばかりだったという、あまりにも突然の訃報でした。発見時は店の中で首に布を巻き付け倒れており、病院に搬送されましたが、死亡が確認されたとのことです。

又野氏は松田優作氏と親交があり、可愛がられていたといいます。松田優作氏もデビュー当時、芝居のタイプがよく似た原田芳雄氏と比較され、悩んだ経験を又野氏に打ち明けていました。その際に又野氏は「お前、それでやり続けていけよ。ちょっとエンジンかかるの遅いかもしれないけど、やり続けていけよ」と励ましたと言います。又野氏はこの言葉を忘れず、「（続けていくことで）いつかは自分の色というものが出てくるのだろうし、若い世代は自分を知ることで向こう（原田や松田）を知ろうと思う事にもなるのだろう」とインタビューで語っています。これは、アクション俳優としての系譜を継承していくという強い意志の表れでもあったのでしょう。

彼の出演作品は多岐に渡り、テレビドラマ、映画、オリジナルビデオ、舞台など幅広く活躍しました。代表作としては『太陽にほえろ!』シリーズ、『兇悪』シリーズ、『デカ玉金助三郎』シリーズなどが挙げられます。Vシネマでは数多くの主演作をこなし、個性的な悪役も演じ分けるなど、俳優としての高いポテンシャルを発揮しました。

又野誠治氏の短いながらも充実した俳優人生は、多くのファンに惜しまれつつ幕を閉じました。松田優作氏への憧憬を胸に、持ち前のアクションスキルと演技力で数々の作品に彩りを添えた彼の功績は、これからも多くの人々の記憶に刻まれることでしょう。

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