友達はいいな

トムとジェリー：友情の夜と、いつもの喧嘩

1962年公開のアニメーション短編映画『友達はいいな』（原題：Buddies Thicker Than Water）は、トムとジェリーシリーズの中でも特筆すべき一作です。監督はジーン・ダイッチ、プロデューサーはウィリアム・L・スナイダーが務め、シリーズ12作目にあたります。タイトルは「血は水よりも濃い」という諺を捩ったもので、トムとジェリーが普段とは異なる関係性を示唆しています。

物語は、ニューヨーク市の雪深い夜から始まります。豪華なペントハウスで暖かく眠るジェリーに対し、トムは飼い主に外へ放り出され、凍えるような寒さに震えています。絶体絶命の状況の中、トムは助けを求めるメモをボトルに入れてジェリーの部屋の窓に投げ込みます。

騒音で目を覚ましたジェリーは、トムの窮状を知り、普段のライバル関係を一時的に忘れ、トムを助け出すことに。エレベーターで階下へ降り、凍え切ったトムを救助し、ペントハウスへ運びます。ジェリーは電気ウォーマーでトムを温め、温かい食事を振る舞い、二人の間には奇妙な友情が芽生えます。

二匹はペントハウスでくつろぎ、音楽を聴き、シャンパンを飲み交わし、笑い合うなど、普段は見られない和やかな時間を過ごします。しかし、飼い主の帰宅により、その短い友情は終わりを告げます。酩酊状態のトムとジェリーは飼い主に発見され、ジェリーは隠れるものの、トムは飼い主に媚びへつらい、ジェリーを裏切ります。

ジェリーはトムの裏切りに激怒し、復讐を決意。トムを恐怖に陥れるため、ジェリーは巧妙な策略を仕掛けます。彼は自分の体にフェイスパウダーを塗り、幽霊のような姿に変装。不気味な音楽を流し、電気を消してトムを脅かし、ペントハウス内を逃げ惑わせます。トムは恐怖のあまり、ソファーやシャンパンキャビネットに隠れるものの、ジェリーは巧みにトムを追い詰めます。

しかし、ジェリーの策略は、雪の中を走り回るうちに粉が流れ落ち、正体が露呈することで失敗に終わります。トムは激昂し、ジェリーを殺そうとしますが、誤って建物から転落。再び助けを求めるメモをジェリーに送りますが、ジェリーはそれを無視し、さらに紙飛行機にして投げ返すなど、徹底的にトムをからかいます。

最後は、ジェリーが壁の穴にもぐりこんで眠りにつく場面で幕を閉じます。この作品では、トムとジェリーが普段の喧嘩を一時的に忘れ、友情を育む様子が描かれていますが、最後はいつものようにトムとジェリーの追いかけっこで終わるという、二人の関係性を象徴するような結末となっています。

なお、トムとジェリーがシャンパンを飲むシーンは、一部地域ではカットされているとのことです。このシーンは、二人の友情が一時的に芽生えたことを示す象徴的なシーンであり、カットされた地域では、より二人の関係性が対立軸で強調されている可能性があります。様々な文化や地域によって、このシーンの解釈や重要性が異なってくる点も興味深いところです。

この作品は、トムとジェリーのユーモラスなやり取りはもちろん、友情と裏切り、そして復讐といった複雑なテーマを巧みに織り交ぜた、見応えのあるアニメーションとなっています。二人のキャラクターの表情や動きにも注目しながら、ぜひ鑑賞してみてください。

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