双柿舎

双柿舎について

双柿舎（そうししゃ）は、静岡県熱海市水口町に位置する歴史的な建物であり、著名な文学者の坪内逍遥が1920年から1935年までの晩年をここで過ごしました。名称は、逍遥の同期であった会津八一が名付けたもので、庭にあった2本のカキの木に由来しています。そのため、「双柿舎」という名前に定められました。現在、この施設は早稲田大学の管理下にあり、教育的な価値を持つ重要な文化遺産として存続しています。

建物の設計と構造

双柿舎は、坪内逍遥自身が設計した建物です。特徴として、木造の2階建ての建物が2棟と、仏塔の形に似た鉄筋コンクリートの書屋があります。この書屋は、彼自身が愛用した多くの書物を納めるためのスペースとして機能しています。入り口には、会津八一が書いた「雙柿舎」の扁額が掲げられており、旧字体の「双」という字が使用されているのも特徴的です。

当時、逍遥が住んでいた際に存在していたカキの木は枯れてしまいましたが、彼が幼少期を過ごした岐阜県美濃加茂市から移植された2本の蜂屋柿の木が現在植えられています。これにより、双柿舎の周囲にはかつての風情がわずかに残されています。

文学活動と作品

逍遥が双柿舎に住むようになってからは、短歌や俳句の創作を手掛けました。その代表的な作品集には『柿紅葉』（逍遥協会、1988年）があり、彼の感性や文学的視点が色濃く表れています。この作品集には、彼が感じた四季折々の風景や思索が詰め込まれており、文学愛好者にとっては貴重な資料となっています。

墓所と文化的意義

坪内逍遥の墓所は、近くの海蔵寺にあります。双柿舎は単なる古い建物ではなく、文学史における重要な位置を占め、逍遥の創作活動を支えた場所としても知られています。そのため、この地を訪れることは、彼の文学を理解するための貴重な体験となります。

参考文献

この情報は、坪内稔典による「柿への旅(12)双柿舎の先生」という記事（『図書』733号、2010年3月、岩波書店）に基づいています。また、双柿舎に関する情報は早稲田大学双柿会の活動を通じても更新されています。双柿会は、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館を中心に活動する任意のボランティア団体で、双柿舎をより多くの人々に知ってもらうための取り組みを行っています。

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