反粒子

反粒子とは

反粒子とは、ある素粒子（または複合粒子）と比べて、質量とスピンが同じで、電荷などの正負の属性が逆になっている粒子のことです。特に、陽電子や反陽子といった反レプトンや反バリオンを指すことがあります。

反粒子の特徴

対消滅: 反粒子が通常の粒子と衝突すると、対消滅を起こし、すべての質量がエネルギーに変換されます。この現象は、アインシュタインの有名な式 E=mc² によって説明されます。
対生成: 粒子と反粒子対の質量の合計よりも大きなエネルギーを与えると、粒子と反粒子が生成されることがあります。これを対生成と呼びます。

理論的背景

相対論的量子力学

相対論的量子力学では、フェルミ粒子の振る舞いを記述するディラック方程式に、負のエネルギー固有値が現れるという問題がありました。ポール・ディラックは、この問題に対して、空孔理論を用いて「正のエネルギーを持つ反粒子が存在するからだ」という解釈を提唱しました。

場の量子論

場の量子論では、ディラック方程式の解を運動量空間で展開し、負の振動モードを表す場を反粒子と定義します。この理論的枠組みでは、粒子と反粒子が衝突して光子に変わるなどの過程を、生成消滅演算子を用いて数学的に記述できます。現代の素粒子論は、場の量子論に基づいた標準模型が実験結果を非常に正確に記述することが分かっており、粒子や反粒子の散乱断面積や崩壊幅などは、場の理論を用いて計算されます。

数学的な取り扱いにおいては、粒子が時間軸を過去に向かって進んでいるものを反粒子であると解釈することもあります（CPT定理）。

具体例

電子の反粒子は陽電子です。
陽子の反粒子は反陽子です。
中性子の反粒子は反中性子です（中性子は電荷を持たないが、内部のクォークが反粒子であるため、反中性子が存在します）。
光子は、反粒子と粒子が同じであるため、区別がありません。

関連項目

反物質: 反粒子で構成された物質。
マヨラナ粒子: 自身が自身の反粒子であるような粒子。
* 素粒子: 物質を構成する基本的な粒子。

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