収容分類級

日本の刑事施設における受刑者分類基準の変遷

かつて日本の刑務所では、受刑者を収容する施設や区画を分類する基準として「収容分類級」が用いられていました。これは、旧監獄法に基づき、受刑者を適切に分類することで再犯防止や矯正教育効果の向上を図ることを目的としていました。しかし、2006年5月24日、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の施行により、収容分類級は廃止され、「処遇指標」へと変更されました。

廃止された収容分類級

収容分類級は、受刑者の属性や犯罪傾向などを基に分類されていました。2004年12月31日時点での分類は以下の通りです。

A級: 犯罪傾向が進んでいない者
B級: 犯罪傾向が進んでいる者
F級: 日本人と異なる処遇を必要とする外国人
I級: 禁錮刑に処せられた者
J級: 少年
L級: 執行刑期8年以上の者
Y級: 26歳未満の成人
M級: 精神障害者
P級: 身体上の疾患または障害のある者
Jt級: 16歳未満の少年で、少年院での矯正教育を必要とする者
W級: 女子

これらの分類は、受刑者の収容場所や、どのような矯正プログラムを提供するかなどを決定する上で重要な役割を果たしていました。しかし、個々の受刑者の状況をより詳細に把握し、より効果的な矯正処遇を行う必要性から、新たな分類基準である処遇指標へと移行されました。

現行の処遇指標

現在の刑事施設では、刑の執行開始時に実施される処遇調査の結果に基づき、個々の受刑者に対して処遇指標が決定されます。処遇指標は、受刑者の属性、犯罪傾向、更生への意欲など、多角的な視点から設定されています。指標は大きく分けて、矯正処遇の種類と内容による指標、受刑者の属性と犯罪傾向の進度による指標の2種類があります。

矯正処遇の種類及び内容による処遇指標

作業: V0（一般作業）、V1（職業訓練）
改善指導: R0（一般改善指導）、R1（薬物依存離脱指導）、R2（暴力団離脱指導）、R3（性犯罪再犯防止指導）、R4（被害者の視点を取り入れた教育）、R5（交通安全指導）、R6（就労支援指導）
教科指導: E1（補習教科指導）、E2（特別教科指導）

これらの指標は、受刑者のスキル習得や社会復帰支援、問題行動の改善などを目的としたプログラムの選択に用いられます。

受刑者の属性及び犯罪傾向の進度による処遇指標

D: 拘留受刑者
Jt: 少年院への収容を必要とする16歳未満の少年
M: 精神上の疾病または障害を有する者
P: 身体上の疾病または障害を有する者
W: 女子
F: 日本人と異なる処遇を必要とする者
I: 禁錮受刑者
U: おおむね26歳未満で、小集団による矯正教育が必要と認められる者
J: 少年院への収容を必要としない少年
L: 執行すべき刑期が10年以上である者
Yj: 少年審判で検察官送致時に20歳未満で、20歳以上26歳未満で可塑性に期待した矯正処遇が必要と認められる者
Y: 20歳以上26歳未満で、可塑性に期待した矯正処遇が必要と認められる者（Yjに該当しない者）
A: 犯罪傾向が進んでいない者
B: 犯罪傾向が進んでいる者

これらの指標は、受刑者の年齢、性別、精神状態、犯罪歴などを考慮して設定されます。

処遇指標は、収容分類級に比べてより詳細で、個々の受刑者の状況に合わせた矯正処遇を行うことを目指した制度です。 これは、単に受刑者を管理するだけでなく、再犯防止と社会復帰支援という観点から、より効果的な矯正プログラムを提供するための重要なステップと言えます。 今後も、犯罪情勢の変化や矯正処遇に関する新たな知見を踏まえ、更なる改善が期待されます。

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