収用

収用（しゅうよう）とは

収用とは、公権力が個人の所有する動産や不動産を、強制的に取得する行為を指します。これは、所有者の意思に関わらず、国家や地方公共団体などの公的な機関によって行われます。収用は、その目的や対象、期間、補償の有無などによって様々な形態をとります。

収用の種類

収用は、大きく分けて以下の2つの側面から分類できます。

1. 対象による分類

動産の収用: 物品や財産権などの動産を対象とする収用です。戦時中の食料や家畜の没収などが例として挙げられます。
不動産の収用: 土地や建物などの不動産を対象とする収用です。公共事業のための用地取得や、都市計画のための土地整理などが例として挙げられます。土地の収用は、特に「土地収用」と呼ばれることがあります。

2. 期間と補償の有無による分類

一時的な収用: 一時的な使用を目的とする収用で、期間終了後に所有者に返還されます。例えば、災害時の緊急避難場所として建物を一時的に使用する場合などが該当します。
恒久的な収用: 所有権を完全に公的機関に移転させる収用で、所有者には補償金が支払われることが一般的です。公共事業や都市計画のために土地や建物を取得する場合などが該当します。
有償収用:財産の対価が支払われる収用です。
無償収用:財産の対価が支払われない収用です。戦時中の食料没収などが該当します。

収用の目的

収用は、以下のような公共の利益のために行われることがあります。

公共事業の実施: 道路、鉄道、ダム、空港などの公共施設を建設するための用地取得。
都市計画: 都市の再開発や区画整理、公園や緑地の整備。
災害復旧: 災害からの復旧や復興のための用地確保。
国防: 軍事施設の建設や兵站のための土地確保。
その他公益: 公共の福祉を増進するために必要な場合。

収用の手続き

収用の手続きは、各国や地域によって異なりますが、一般的には以下のような手順を踏みます。

1. 収用の決定: 公的機関が収用の必要性と範囲を決定します。
2. 収用計画の策定: 収用対象となる土地や財産の範囲、補償内容、事業計画などを定めます。
3. 収用通知: 所有者に対して、収用を行う旨とその理由、補償内容などを通知します。
4. 協議・交渉: 所有者との間で、補償金額や移転条件などについて協議・交渉を行います。
5. 収用裁決: 協議・交渉が不調に終わった場合、行政機関が最終的な収用と補償金額を決定します。
6. 収用執行: 裁決に従い、財産の所有権を公的機関に移転し、補償金を支払います。

各国の収用制度

各国では、収用に関する法制度や手続きが異なります。例えば、エストニアでは「不動産収用法」によって、不動産の収用が厳格に規制されています。

関連する用語

集団農場: 複数の農家が共同で農業経営を行う形態。土地の集団化に関連して用いられることがあります。
国有化: 民間企業や財産を国家の所有に移すこと。収用と関連する概念です。
徴用: 人や物を強制的に使用すること。収用とほぼ同義ですが、労働力に対しても用いられます。
徴発: 戦時中に、軍需物資や食料などを強制的に調達すること。収用と類似していますが、主に軍事的な文脈で用いられます。
不動産復帰: コモン・ローにおいて、無主不動産を公的機関が取得すること。
* 資産没収: 司法手続きによって、違法行為に関わった財産を没収すること。収用とは異なります。

まとめ

収用は、公共の利益のために必要な場合に、公権力によって個人の財産を強制的に取得する行為です。その手続きや補償内容については、各国の法制度によって定められています。収用は、社会全体の発展のために必要な側面を持つ一方で、個人の財産権を侵害する可能性も孕んでいます。そのため、その実施には慎重な判断と公平性が求められます。

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