徴用

徴用について

徴用（ちょうよう）とは、特に戦時などの緊急事態において、国家が国民や住民を動員し、特定の業務に従事させる制度を指します。これは「勤労動員」とも称され、また、戦時に必要な物品を接収する行為も含まれます。ただし、軍人としての動員を指す「徴用」は通常「徴兵」と呼ばれるため、注意が必要です。世界中でさまざまな形で徴用が実施されてきましたが、法的枠組みも地域により異なります。

歴史的背景

中世・近世の徴用制度

オスマン帝国には、デヴシルメという徴用制度がありました。この制度では、ムラト1世が創設したイェニチェリという軍隊に、バルカン半島に住むキリスト教徒の少年が兵士として動員されました。このように、歴史的に徴用制度は特定のコミュニティや国々で様々な形態を取ることがありました。

近現代の徴用の規範

戦争が始まると、占領した地域の住民を徴用・徴発することに関して、1899年のハーグ陸戦条約が整備されました。この条約では、正当な対価なしでの徴用や接収は禁じられています。たとえば、イギリスはインド帝国民を戦時中に徴用しましたが、彼らには英国籍が与えられていないため、法的には国民とは見なされていませんでした。それでも、ハーグ陸戦条約に則ってこの行為は行われたのです。

日本における徴用制度

大日本帝国では、朝鮮人も日本国籍を持つものとみなされ、内地に住む日本国籍の男子と同様に扱われていました。そのため、彼らには地方参政権や国政選挙の議員選挙権、被[[選挙権]]が与えられていました。しかし、内地以外に住む者たちは、選挙権がない状況でした。

1939年には国民徴用令が制定され、第二次世界大戦の終結まで適用されました。日本は日中戦争の全面化に伴い、労働力不足を解消するために徴用を拡大しました。元々、1918年に成立した軍需工業動員法は存在したものの、強制力は非常に限定的でしたが、国家総動員法と国民徴用令が公布されることにより、徴用制度は強制的に整備されました。

1942年には企業整備令が公布され、娯楽や観光業などの不急不要の産業が整理されることで、労働力が軍需関連の分野にシフトされるようになりました。徴用の規模は次第に大きくなり、1944年までに288万人以上が徴用される運びとなり、一般労働者全体の20%を占めるようになりました。

国民徴用令は1945年に廃止されるまで続き、終戦時には新規徴用者161万人と現員徴用者455万人、合わせて616万人が徴用されていました。また、法律上免除されていた朝鮮人にも1944年から徴用が実施され、終戦まで続きました。

徴用者に対しては宿舎が用意され、報酬も支払われましたが、その賃金は日本人の約半分でした。それにもかかわらず、徴用制度は特に朝鮮人の間で人気がありました。実際に、三菱鉱業の募集では高い倍率が生じることからも、その人気の一端が見て取れます。

戦後の1950年には朝鮮戦争が勃発し、アメリカ軍が元日本人船員を徴用する事態にも至りました。

このように、徴用制度は国家の戦争遂行や経済維持のために重要な役割を果たしましたが、その哀しみや影響は、後世にまで長く引き継がれていることを忘れてはなりません。

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