古城 (三橋美智也の曲)

三橋美智也「古城」

楽曲概要

1959年（昭和34年）6月21日にリリースされたシングルレコード「古城」は、日本の戦後歌謡界を代表する歌手の一人、三橋美智也の楽曲です。この作品は、彼の数多のヒット曲の中でも特別な位置を占める、まさに代表作と呼ぶにふさわしい一曲であり、発表当時、社会現象とも呼べるほどの大ヒットを記録しました。

記録的な大ヒット

「古城」は発売から間もなく、その哀愁漂うメロディーと詩情豊かな歌詞が人々の心を捉え、爆発的なヒットとなりました。推定される売り上げ枚数は約300万枚にも達したと言われており、これは当時の日本の音楽市場において驚異的な数字です。この記録的なセールスは、三橋美智也の全キャリアを通じて最大の成功であり、「古城」は彼の名前とともに長く語り継がれる国民的な楽曲となりました。この成功によって、三橋美智也は名実ともに日本のトップスターとしての地位を不動のものにしたと言えるでしょう。

紅白歌合戦における特別な演出

「古城」の歴史を語る上で外せないのが、1959年末に開催された第10回NHK紅白歌合戦での歌唱です。三橋美智也はこの年の紅白にこの大ヒット曲で出場しましたが、当時の紅白歌合戦には「異性間のコーラスを禁止する」という独特のルールが存在していました。そのため、オリジナル音源で楽曲に深みを与えていた女声コーラスのパートは、純粋で力強いボーイソプラノを特色とする東京少年合唱隊によって担当されました。この紅白でのパフォーマンスは、当時の規定による制約の中で行われたものでしたが、結果としてオリジナル音源とは異なる、歴史に残る特別なバージョンとして多くの視聴者の記憶に刻まれました。

後年の評価と再演

「古城」は、リリースから長い年月が経過してもその輝きを失いませんでした。1990年8月11日に放送されたNHKの『思い出のメロディー』では、三橋美智也自身によって再びこの名曲が歌唱されました。この時の歌唱は、長年の歌手活動を経て円熟味を増した彼の芸と、楽曲が持つ普遍的な魅力が見事に融合したパフォーマンスとして、「三橋演歌50年間の集大成」と高く評されました。この再演は、「古城」が単なる一過性の流行歌ではなく、時代を超えて歌い継がれる日本のスタンダードナンバーであることを改めて証明しました。

国際的な広がり

「古城」の人気は国内に留まらず、海外にも影響を与えました。マレーシアでは、現地の著名な歌手である荘学忠（ちょう がくちゅう）によって、「夕陽紅」（ゆうようこう）というタイトルでカバーされています。これは、楽曲の持つ美しいメロディーや叙情性が、言語や文化の違いを超えて人々の共感を呼んだ例と言えるでしょう。

シングル盤情報

「古城」が収録されたシングル盤には、以下の楽曲も収められていました。

古城
作詞：高橋掬太郎
作曲・編曲：細川潤一
祭り太鼓
作詞：横井弘
作曲・編曲：吉田矢健治

「古城」は、三橋美智也の偉大な功績を語る上で欠かせない一曲であり、その壮大なスケールと、聴く者の心に深く響く情感は、リリースから半世紀以上を経た今なお、多くの人々に愛され続けています。日本の歌謡史における不朽の名作として、「古城」はこれからも語り継がれていくことでしょう。

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