古川修 (建築研究者)

古川修（ふるかわ おさむ）は、1925年10月3日に生まれ、2000年3月2日に逝去した、日本の建築学分野における重要な研究者です。特に建築経済や建築産業構造に関する貢献で知られ、京都大学名誉教授の称号を授与されました。

学術および専門機関での活動

古川氏のキャリアは多岐にわたります。

大学教育: 1974年、京都大学工学部の教授に就任し、建築施工の講座を担当しました。ここでは長年にわたり教鞭をとり、多くの学生や研究者を指導・育成しました。1989年に京都大学を退官した後も、研究者としての活動は続きます。1989年4月から1993年3月にかけては、工学院大学工学部で教授として、建築学の教育と研究に貢献しました。

専門機関での役割: 学術機関以外にも、建築産業の発展に資する活動に従事しました。1992年10月から1999年3月まで、財団法人建築コスト管理システム研究所の理事長を務め、建築コスト管理の合理化やシステムの開発・普及に尽力しました。この期間の活動は、日本の建設産業におけるコスト管理のあり方に大きな影響を与えました。

研究と功績

古川氏の研究の核心は、建築経済と建築産業構造に置かれていました。建築物を単なる工学的な対象として捉えるだけでなく、その生産プロセス、コスト構造、そして産業全体が持つ経済的・社会的な側面を深く分析しました。これらの研究は、日本の高度経済成長期における建築需要の増大や産業構造の変化の中で、建築生産の効率化や産業の近代化を図る上で重要な理論的基盤を提供しました。

長年の研究活動と建築産業への貢献は高く評価されました。

平成2年（1990年）には、その功績に対し建設大臣表彰が授与されました。
平成5年（1993年）には、労働大臣表彰を受賞しています。これらの表彰は、建築学における学術的な業績と、建設産業の実務への貢献を公的に認めるものでした。

遺産

古川氏が生涯をかけて収集し、研究活動の基盤とした蔵書は、その逝去後、貴重な学術資料として引き継がれることになりました。これらの蔵書は、東日本建設業保証が設立・運営する建設産業図書館に収蔵され、一般に公開されています。これは、古川氏の研究と思想が、後世の研究者や実務家に引き継がれ、日本の建設産業の発展に今後も寄与し続けることの象徴と言えます。

主な著作

古川氏の主要な著作には、以下のものがあります。

『日本の建設業』（岩波新書、岩波書店、1963年）：日本の建設産業の黎明期における構造と課題を分析した先駆的な著作です。
『建築経済 : 設計・生産・組織』（P.A.ストーン 著、藤上輝之と共訳、鹿島研究所出版会、1968年）：建築の経済学に関する海外の重要な著作を翻訳し、日本の学界に紹介しました。
* 『建築生産システム』（永井規男、江口禎と共著、彰国社、1982年）：建築物の生産プロセスをシステムとして捉え、その効率化や管理について体系的に論じています。

これらの著作は、日本の建築学、特に建築経済や建築生産管理分野における基礎的な文献として、現在も参照されています。

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