古村孝志

古村孝志について

古村孝志氏は、1963年生まれの日本の地震学者で、東京大学地震研究所の教授を務めています。地震学研究における第一人者であり、過去には日本地震学会の副会長や東京大学地震研究所の所長といった要職を歴任しました。地震波の伝播や強震動シミュレーションを専門とし、特に首都圏における地震動や長周期地震動の研究に注力しています。

生い立ちと学歴

古村氏は、1963年に生まれ、小矢部市立石動小学校、小矢部市立石動中学校を経て、富山県立高岡高等学校理数科を卒業しました。その後、北海道大学に進学し、1987年に理学部地球物理学科を卒業。1989年には同大学の理学研究科地球物理学専攻修士課程を修了し、1992年には同博士課程を修了しました。北海道大学での研究生活を通して、地震学における基礎を築きました。

職歴

1992年、古村氏は北海道教育大学教育学部岩見沢校の助手を務めたのを皮切りに、講師、助教授とキャリアを重ねました。2000年には東京大学地震研究所に移籍し、地震火山災害部門の助教授に就任。2008年には同研究所の教授に昇任し、地震学研究の中核を担う存在となりました。また、2008年から2015年までは東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの教授も兼務。2015年には東京大学地震研究所災害科学系研究部門の教授となり、2023年4月には東京大学地震研究所の所長に就任しました。研究者としてだけでなく、教育者、組織の管理者としても卓越した能力を発揮しています。さらに、2016年5月から日本地震学会の理事（副会長）を務めるなど、学会運営にも貢献しました。

海外研究

古村氏は、国際的な研究活動にも積極的に取り組んでいます。1995年5月から1996年10月にかけて、JSPS海外派遣研究者として、オーストラリア国立大学地球科学研究所で訪問研究員を務めました。さらに、1997年8月から1998年1月には、文部省在外研究員として再び同研究所を訪問。国際的な研究ネットワークを構築し、自身の研究を深めました。

メディア出演と著書

古村氏は、メディアにも積極的に出演し、地震に関する情報を一般の人々にもわかりやすく伝えています。また、著書も執筆しており、2011年6月には「東日本大震災を解き明かす」（NHK出版）を出版しました。この著書は、東日本大震災のメカニズムや被害について詳しく解説しており、多くの人々に地震に対する理解を深めるきっかけとなりました。

論文・予稿・寄稿文

古村氏は、数多くの論文、予稿、寄稿文を発表しています。博士論文である「Pseudospectral法による理論地震記象の研究」をはじめ、地震波の伝播や強震動に関する重要な研究成果を発表。特に、首都圏における長周期地震動や、過去の地震の解析に関する研究は、地震防災対策に大きく貢献しています。

古村孝志「Pseudospectral法による理論地震記象の研究」北海道大学 博士論文甲第2995号、1992年
古村孝志, 森谷武男「微動及び地震観測用デジタルレコーダの試作」『地震 第2輯』第41巻第3号、1988年
竹中博士, 古村孝志, 大島弘光「P38 マグマ溜りが地震波形に及ぼす影響」『日本火山学会講演予稿集』第1991巻、1991年
古村孝志, 竹中博士, 二宮市三「高速ハートレ変換は高速フーリエ変換を越えるか-」『日本応用数理学会論文誌』第3巻第3号、1993年
古村孝志, 纐纈一起「数値シミュレーションで見る兵庫県南部地震の強震動」『物理探査学会学術講演会講演論文集』第95巻、1996年
古村孝志「北海道・東北日本で見られる地震波の伝播・減衰異常」『日本地震学会講演予稿集』第1998巻、1998年
古村美津子, 古村孝志「十勝平野の地震動応答 -伝播経路の影響-」『日本地震学会講演予稿集』第1998巻第2号、1998年
古村孝志, 纐纈一起, 坂上実, 山中佳子, 高橋正義「2000年伊豆諸島群発地震における式根島の震度異常と地盤増幅特性」『地震 第2輯』第54巻第2号、2001年
纐纈一起, 古村孝志「2001年芸予地震の強震動分布と深部地下構造」『地震. 2輯』第55巻第2号、2002年
古村孝志「1038 日本列島の地震波動伝播と強震動の大規模数値シミュレーション」『計算力学講演会講演論文集』第2003巻、2003年
古村孝志, 中村操「1944年東南海地震記録の復元と関東の長周期地震動」『物理探査』第59巻第4号、2006年
古村孝志「関東平野での長周期地震動の生成メカニズム」『JSSC : 日本鋼構造協会機関誌』第60巻、2006年
古村孝志, 竹内宏之「首都圏直下の地震と強震動 : 安政江戸地震と明治東京地震」『地學雜誌』第116巻第3号、2007年
古村孝志「首都直下の大地震に備えて」『常設研究会資料』第510号、2007年
古村孝志「関東平野の長周期地震動を可視化する(<連載>謎を可視化する-24)」『建築雑誌』第1569号、2007年
古村孝志「大地震の強震動シミュレーション」『自然災害科学』第27巻第3号、2008年
今井健太郎, 佐竹健治, 古村孝志「南海トラフで発生する地震による四国南部沿岸での津波継続特性」『土木学会論文集B2(海岸工学)』第65巻第1号、2009年
古村孝志「地球シミュレータによる地震波伝播と強震動シミュレーションと今後の展望」『計算工学』第16巻第1号、2011年
古村孝志「東北地方太平洋沖地震の強震動と巨大津波の発生メカニズム」『安全工学』第50巻第6号、2011年
古村孝志「東海・東南海・南海地震，そして首都直下地震－わかったこと・わからないこと」『生産研究』第64巻第5号、2012年
古村孝志, 武村俊介, 前田拓人「地球シミュレータによる3次元不均質媒質中を伝播する広帯域地震動シミュレーション」『Annual report of the Earth Simulator Center』、2012年
大堀道広, 川谷和夫, 田嶋佐和, 高橋成実, 金田義行, チタクセチキン, 中村武史, 坂上実, 武村俊介, 古村孝志, 竹本帝人, 岩井一央, 久保篤規「高知市街地の浅層地盤モデルの構築」『日本地震工学会論文集』第13巻第1号、2013年
金井則之, 本橋英樹, 野中哲也, 中村真貴, 古村孝志, 原田隆典「工場内津波浸水予測および対策への広域3D津波シミュレーションの適用」『土木学会論文集B3（海洋開発）』第71巻第2号、2015年
地引泰人, 大原美保, 田中淳, 古村孝志「東日本大震災における高速道路走行中の運転者の行動に関する分析」『地域安全学会論文集』第26巻、2015年
原田智也, 佐竹健治, 古村孝志, 室谷智子「1944年東南海地震(M7.9)の震度分布 : 発生直後に行われたアンケート調査資料の再検討」『東京大学地震研究所彙報』第92巻第1号、2017年
原田智也, 西山昭仁, 佐竹健治, 古村孝志「明応七年六月十一日（1498年6月30日）の日向灘大地震は存在しなかった:『九州軍記』の被害記述の検討」『地震 第2輯』第70巻、2017年
原田智也, 佐竹健治, 古村孝志, 室谷智子「1944年東南海地震(M7.9)の震度分布(2)調査票の欄外に記された被害と諸現象の特徴」『東京大学地震研究所彙報』第93巻第2号、2018年
大石裕介, 古村孝志, 今村文彦, 山下啓, 菅原大助「南海トラフ巨大地震による津波の東京湾周辺での振動特性」『土木学会論文集Ｂ2（海岸工学）』第74巻第2号、2018年
古村孝志「2015年5月30日小笠原諸島西方沖深発地震と異常震域の謎」『地震ジャーナル』第66号、2018年
大石裕介, 永山実幸, 古村孝志, 今村文彦, 三原宜輝, 牧野嶋文泰, 山下啓, 東山孝生, 後藤知範, 大村誠「スマートフォンアプリによるリアルタイム災害情報を活用した津波避難の有効性と課題」『土木学会論文集Ｂ2（海岸工学）』第75巻第2号、2019年

古村孝志氏の研究は、地震発生メカニズムの解明や、地震防災対策の向上に大きく貢献しており、その活動は学術界だけでなく、社会全体からも高く評価されています。

もう一度検索