古河虎之助

古河虎之助：総合財閥への道と激動の時代

古河虎之助（1887-1940）は、古河財閥の創業者・古河市兵衛の息子であり、3代目当主として財閥を率いた実業家です。男爵の爵位を授かり、正四位勲三等瑞宝章、紺綬褒章を受章しました。幼少期から慶應義塾で学び、コロンビア大学への留学経験も持ちます。

虎之助は、義兄である古河潤吉の養子となり、潤吉の急逝により若くして古河財閥の重責を担いました。当時、財閥の基盤は足尾[[銅山]]でしたが、鉱毒問題への対応は大きな課題でした。虎之助は、原敬らの助言を受け、東北帝国大学と九州帝国大学への多額の寄付を行い、社会貢献に努めました。現在も残る北海道大学の古河記念講堂はその象徴です。

第一次世界大戦中の銅の需要拡大を背景に、虎之助は古河財閥の多角化を推進しました。古河鉱業を中核に、金融（古河銀行）、商社（古河商事）など多様な企業を傘下に収め、一大コンツェルンを形成しました。横浜ゴム、旭電化工業、富士電機、東亜ペイントなど、現在も名を知られる企業がその傘下に入っていました。

しかし、1920年代には戦後恐慌や投機失敗による経営悪化に見舞われました。古河銀行の経営難をきっかけに、虎之助は古河鉱業社長を辞任し、銀行経営に専念することになります。1920年代後半には、古河商事の破綻、古河銀行の第一銀行への譲渡など、大きな痛手を被ることとなります。

関東大震災では、被災者に自宅を開放し、救援活動を行いました。2000名以上の避難者を受け入れ、医療支援も行ったことは高く評価されています。

1930年代に入ると、満州事変などの影響を受け、重化学工業部門の強化を進めました。古河電気工業や富士電機製造などが成長し、古河財閥は再び発展の道を歩みます。この時代は、軍需産業の拡大が財閥の成長を後押ししました。

晩年は、太平洋問題調査会や東亜経済懇談会などに参加し、国家的な課題にも関与しました。しかし、1940年に病に倒れ、54歳で亡くなりました。

虎之助の死後、養子の古河従純が後を継ぎましたが、第二次世界大戦後の財閥解体によって、古河財閥は大きな変化を経験します。現在も残る旧古河庭園は、虎之助が暮らした邸宅跡であり、当時の面影をしのばせています。虎之助の生涯は、日本の近代化と財閥発展、そして激動の時代の流れを象徴するものでした。彼の経営手腕、社会貢献、そして時代背景を理解することは、日本の近代史を理解する上で重要な要素となるでしょう。

参考文献

「古河財閥と「大連事件」 (PDF)
大蔵省印刷局 『紺綬褒章名鑑』 1987年
* 三田商業研究会編 編『慶應義塾出身名流列伝』実業之世界社、1909年

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