古河電工アイスホッケー部

古河電工アイスホッケー部

古河電工アイスホッケー部は、かつて栃木県日光市を本拠地として活動していた、日本の企業スポーツにおける歴史的なアイスホッケーチームです。その存在は、日本の近代アイスホッケー史において非常に重要な位置を占めています。

チームの起源と日本最古の歴史

チームのルーツは、明治末期にあたる1911年にまで遡ります。当時、古河電気工業日光事業所の前身であった日光精銅所で、一部の社員によってアイスホッケークラブが結成されたのが始まりです。このクラブが、1925年に古河電気工業社内で正式な企業チームとして認められました。この設立年は、日本国内における企業・実業団系のアイスホッケーチームとしては最も古く、古河電工アイスホッケー部は「日本最古のアイスホッケーチーム」としての歴史を誇ります。日本の近代アイスホッケーが歩みを始めた黎明期から、その発展を牽引してきた存在と言えるでしょう。

日本アイスホッケーリーグでの活躍と地域との絆

1966年に日本初のアイスホッケーの全国リーグとして創設された日本アイスホッケーリーグには、その記念すべき第1回大会から参戦しました。以来、リーグの中心チームの一つとして長年にわたり活躍し、数々の名勝負を繰り広げました。

古河電工アイスホッケー部の特筆すべき点は、単なる企業の福利厚生や広告塔としてのチームにとどまらなかったことです。本拠地である日光市において、地域コミュニティとの結びつきが非常に強く、地元市民から「市民チーム」として熱烈な支持を受け、深く愛されていました。企業の枠を超えた、地域密着型のチームとしての側面も強く持っていたのです。

また、親会社である古河電気工業社内においては、かつて存在した古河電工サッカー部（後にプロ化し、現在のジェフユナイテッド市原・千葉の母体の一つとなりました）と並び、企業のシンボルスポーツとして重要な位置づけがなされ、社の内外にその名を知られる存在でした。

活動休止、そして歴史の継承へ

長年にわたり日本の実業団アイスホッケー界を牽引してきた古河電工アイスホッケー部でしたが、1990年代後半に入ると、親会社である古河電気工業を取り巻く経営環境が厳しさを増します。不況による業績の悪化や、全社的な合理化策の一環として、スポーツ活動の見直しが図られることとなりました。

その結果、苦渋の決断として、1999年のシーズンを最後にアイスホッケー部の活動を休止することが発表されました。これにより、1925年に企業チームとして正式に歩み始めてから、約90年にも及ぶ「日本最古の企業アイスホッケーチーム」としての輝かしい歴史に終止符が打たれることとなったのです。多くのファンや関係者が、この歴史あるチームの休止を惜しみました。

しかし、古河電工アイスホッケー部が日光の地に築いたアイスホッケー文化の灯が消えることはありませんでした。チームの活動休止を受け、日光市民有志が中心となり、「H.C.栃木日光アイスバックス」（設立当初の名称はHC日光アイスバックス）が設立されました。この市民クラブチームが、その後アジアリーグアイスホッケーに参戦し、現在に至るまで日光におけるトップレベルのアイスホッケーの伝統を継承しています。

チームの本拠地として多くの試合が行われ、歴史を見守ってきた日光事業所内にあった古河電工アイスリンクも、チーム活動休止の翌年、2000年にその役目を終え閉鎖されました。

古河電工アイスホッケー部は、日本の実業団スポーツ、特にアイスホッケーの発展において、その歴史的な貢献度だけでなく、地域社会との関わりや、経済情勢が企業スポーツに与える影響を示す事例としても、日本のスポーツ史における重要な一章を構成する存在と言えるでしょう。

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