可変深度ソナー

可変深度ソナー（VDS）

可変深度ソナー（Variable Depth Sonar, VDS）は、艦船から送受波器を吊り下げて曳航し、深度を調整しながら音波を発信・受信する機器です。この装置は、海中の音波の伝播特性を最大限に活かし、潜水艦の探索や追尾を目的としています。特に、音速の変化に対応することで、深度に応じた音響のプロファイルを形成します。

原理について

音速に影響を与える要因は、主に海水の温度、塩分濃度、水圧の3つです。これにより、海中での音速は深度によって異なるため、特定の深度範囲内での音速を定義した「音速プロファイル」を利用します。この音速プロファイルは、海の特性に応じて層に分けられており、最も表層に近い部分は外的な影響を受けやすく音速は安定しませんが、この層が形成する「混合層」は音波を効果的に伝えるサウンドチャネルを作り出します。

混合層の下部には水温が急激に変化する「水温躍層」が存在し、その影響でシャドウゾーン（音波が届かない区域）が生じることがあります。このゾーンに潜む潜水艦を探知するためには、送受波器をこの躍層より深い位置に設置する必要があります。これがVDSの基本的な仕組みです。

運用方法

VDSの送受波器は、設計上あまり大きくすることができず、主に高い周波数が使用されるため、探索や追尾は主として近距離の目標を対象としています。しかし、艦艇が悪天候に遭遇した場合、送受波器の取り扱いが難しくなることや、曳航時の速度制限などから運用上の制約が増えます。また、艦艇から吊るすことで正確な位置把握が難しく、探知してもその情報を攻撃に活用するためには高い精度が求められます。

そのため、対潜戦術はパッシブ戦にシフトし、アクティブソナーに頼らない傾向が見られました。ノックス級フリゲートでは、1980年代から新しいタイプの曳航ソナーであるAN/SQR-18A (V)1 TACTASSを使用し、さらにその後のAN/SQR-19はアクティブ機能を持たないパッシブソナーとして開発されました。それでも潜水艦の静音性の向上により、再びアクティブ・ソナーへの需要が高まっています。

代表的な機種

アメリカ合衆国

• - AN/SQA-10: AN/SQS-30Bの派生型。
• - AN/SQQ-32: 対機雷戦用。
• - AN/SQS-35 IVDS: 米海軍第2世代の可変深度ソナー。
• - AN/AQS-13: 哨戒ヘリコプター用吊下式ソナー。

ソビエト連邦 / ロシア

• - VGS-2「オーカ-2」: グリシャ型コルベット搭載。
• - MG-355「ポリノム」: 統合ソナー・システムのVDS部。
• - MGK-345「ブローンザ」: ウダロイ-II級駆逐艦搭載。

フランス

• - DUBV-43: AN/SQS-35 IVDSに相当し、曳航深度700メートル。
• - CAPTAS: 戦術曳航ソナーとしての能力を持つ。

可変深度ソナーは、近年の技術革新により、より精密な探知が可能となり、対潜戦術においても重要な役割を果たし続けています。

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