台北市区計画

台北市区計画の歴史と影響

台北市区計画（たいほくしくけいかく）は、1899年（明治32年）に公布された台北における初の全市的な都市計画です。この計画は1932年（昭和7年）まで実効を持ち、当時の都市計画の基盤を形成しました。都市衛生の改善を主要な目的としており、上下水道整備と共に進められました。

台北の衛生状態と背景

1895年（明治28年）頃、台湾ではマラリアとペストが流行し、台北市の衛生状態は非常に劣悪でした。狭く曲がりくねった道路と、土干し煉瓦で作られた家屋が多く、下水は道路上に投棄され、地下に浸透している有様でした。このような状況では、阿片対策と同様に都市の衛生改善が最優先の課題となりました。

ウィリアム・K・バートンによる報告

1896年（明治29年）、台湾総督府の衛生顧問である後藤新平は、技師のウィリアム・K・バートンを台湾に派遣し、上下水道の整備状況を調査させました。バートンは1897年（明治30年）に報告書を提出し、台北市の下水道工事を優先すべきと提言しました。また、台北市街の設計図を作成し、新しい道路の幅員を定める必要性を強調しました。

総督府はこの提案を受け入れ、台北地下水を利用しつつ新しい上水道工事を含む都市計画を進めることとなりました。具体的な工事は、1898年（明治31年）4月に設立された台北市市区改正委員会を通じて進められました。

台北市区計画の具体的内容

この計画は、未来の人口を1929年（昭和4年）には15万人に達するとの予測に基づいて設計されました。実際には、1910年頃には既に17万人に達したといわれています。都市の街路系統は、南北の幹線道路と、大稲埕と城内を結ぶ東西の幹線道路を基準に設定され、街区は長方形に配置されました。

特に、東風を意識した設計により、街路は東西方向よりも少し東北に傾けられ、光と風を適切に取り入れる設計がなされました。また、艋舺（ばんか）や大稲埕では、既存の道路の改良に注力し、無駄な新設を避ける方針が採用されました。

城壁は撤去され、その跡地には遊歩道路が設けられ、車道と両側の歩道に植樹帯が設けられました。これにより三線道路が完成し、都市のランドマークでもある四つの城門は文化財として保存されています。

計画の実行とその後の展開

このような都市計画が進む中、1901年（明治34年）に台湾総督府官邸が建設され、1910年代には鉄道関連の施設や博物館、大学などが次々と建築されました。これにより台北は急速に近代化し、都市景観が大きく変化することとなりました。

さらに、1920年代以降には台北郵便局やラジオ局などの公共施設も整備され、台北の発展が続きました。このように、台北市区計画は単なる衛生改善に留まらず、台湾全体の近代化と都市発展の礎となったのです。日治時代の台北は、この計画の実施によって新たな時代を迎えることとなりました。

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