台湾総督府報

台湾総督府報と台湾総督府官報

台湾総督府報および後に改称された台湾総督府官報は、日本統治時代の台湾における台湾総督府が発行した公式な広報媒体でした。これらの機関紙は、統治期間中に公布された法令や告示、人事、各種報告など、総督府の活動に関する重要な情報を広く伝達する役割を担いました。

発行の経緯と初期の形態

台湾総督府は当初、独自の機関紙を発行する計画を持っていました。しかし、1896年（明治29年）6月、木村安蔵氏が日刊新聞『台湾新報』の発行を願い出たことを機に、総督府はこの計画を見直しました。経費の削減と情報普及の効率性を考慮し、『台湾新報』に付録として府報を掲載する形式が採用されることになったのです。総督府は『台湾新報』社に対し、年間4,800円を支払い、同社は3日に一度、最低6ページにわたる府報を新聞の付録として発行するという契約が結ばれました。

発行開始当初の府報には、通し番号（号数）の印刷がありませんでした。現在確認できる最古の記録は、『台湾新報』第75号の付録として発行された明治29年8月の目録中に見られる8月20日付のものです。ただし、この号を含む一部は現存が確認されておらず、実際に現在閲覧可能な最古の紙面は、同紙第15号の付録として発行された同年8月28日付のものとされています。号数が印刷されるようになったのは、1897年（明治30年）1月5日付で発行された『台湾新報』第98号付録の府報からです。これ以降、日本政府の官報と同様に、元号が変わるごとに号数は改めて第1号から振り直されることになりました。

府報の題号表示には変遷が見られます。明治29年8月28日から明治32年12月30日付の第669号までは「臺灣總督府報」と表記されていましたが、明治33年1月10日付の第670号以降、1942年（昭和17年）3月31日に至る第4452号まで、題号は簡略化され「府報」となりました。

新聞との関係と発行形態の変遷

1898年（明治31年）5月1日、『台湾新報』が他の新聞と合併して『台湾日日新報』が創刊されました。これに伴い、府報は以後、『台湾日日新報』の付録として発行されることになります。

1900年（明治33年）には台湾新聞紙条例が施行されました。もし府報を掲載している『台湾日日新報』が、この条例に違反して発行停止などの処分を受けた場合、府報の発行にも支障が生じる可能性が出てきました。この事態を回避するため、同年10月1日、府報の発行主体は総督府自身となり、台湾日日新報社がその販売を担う形式に変更されました。しかし、台湾日日新報社の社長であった守屋善兵衛氏からの要望を受け、府報は翌1901年（明治34年）12月1日から、再び『台湾日日新報』の付録として発行される形式に戻されました。この付録形式は、その後長期にわたり継続され、1942年（昭和17年）3月31日まで続きました。

台湾総督府官報への移行と終焉

1942年（昭和17年）4月1日、機関紙は「台湾総督府報」から台湾総督府官報へと改称されました。この新しい官報も引き続き総督府が発行主体となり、印刷と販売は台湾日日新報社が担当しました。さらに、1944年（昭和19年）4月1日以降は、台湾域内の新聞社統合によって新たに設立された台湾新報社（二代目）が、官報の印刷と販売を引き継ぎました。

台湾総督府官報は、第二次世界大戦終結に伴う台湾総督府の廃止により、1945年（昭和20年）10月をもってその歴史に幕を下ろしました。最終号は同年10月23日付で発行された第1027号でした。

資料としての価値

台湾総督府報および官報は、当時の台湾における日本の統治政策、社会制度、経済活動、文化状況などを理解する上で不可欠な一次資料です。公布された法令の原文はもちろん、人事異動、各種統計、公的な告知など、多岐にわたる情報が網羅されています。現在、台湾の複数の機関がこれらの機関紙について、記事索引や紙面画像データをデジタル化し、オンラインで公開しています。これにより、研究者や一般の人々が容易にこれらの貴重な歴史資料にアクセスできるようになり、日本統治時代の台湾史研究はもとより、当時の行政や社会のあり方を知る上で重要な基盤となっています。

（注：この記事は公開情報に基づき、辞書的な説明を目的として記述されています。）

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