史明

史明の人生と思想

史明（しめい、シーミン）は、1918年11月9日に台湾の台北州士林で生まれた歴史家であり、台湾独立運動の重要な指導者です。彼の本名は施朝暉（し・ちょうき）で、若い頃から政治に対する強い関心を持ち、母国台湾の未来について深く考えていました。

初期の人生と教育

彼の父、林済川は台湾文化協会に関与しており、母は士林の名家出身であり、史明は家庭環境からも様々な価値観に触れました。1937年に日本に渡り、早稲田大学で政治学を学びました。この学びの中で彼は、社会主義や無政府主義に感銘を受け、特にマルクス主義に強く心を惹かれました。

大学卒業後、彼は1942年に中国大陸に渡り、中国共産党の抗日運動に参加しました。しかし、彼は共産党の独裁や土地改革の過酷さを目の当たりにして徐々にその思想に失望し、台湾独立の必要性を強く感じるようになりました。彼は現地で300人規模の「台湾隊」を結成し、台湾人の立場から独立を目指しました。

日本への亡命

1949年の共産党勝利の際、彼は台湾に戻り「台湾独立革命武装隊」を結成しましたが、この計画は失敗に終わります。そこで日本に亡命し、東京の池袋で料理店『新珍味』を経営しながら、台湾独立のための活動を続けました。彼は新たに「独立台湾会」を設立し、台湾島内での地下活動に取り組みました。特に、『独立台湾』という刊行物を通じて独立運動の意義を訴えました。

『台湾人四百年史』の執筆

史明の代表的な業績の一つは、10年をかけて書き上げた『台湾人四百年史』です。この作品は台湾人の視点から見た台湾の歴史を網羅的に扱ったものであり、1962年に日本語で出版されました。この本は台湾独立運動の思想的基礎として、1980年代以降の若い世代の「台湾人意識」の覚醒に寄与しました。彼は歴史を通して台湾人自身のアイデンティティを再認識させる重要な役割を果たしました。

台湾への帰郷

台湾の民主化後、史明は1993年に故郷に帰り、様々な団体を通じて独立運動を推進しました。彼は蔡英文政権下で総統府資政としても活躍し、台湾の未来を見据えた議論を続けました。また、自伝『100歳の台湾人革命家・史明 自伝』を通じて、自身の経験や信念を次世代に伝える活動を行いました。

2019年9月20日、史明は台北市内の病院で亡くなりました。彼の業績は多くの台湾人に影響を与え、2021年には彼を記念する文物館も開館されました。史明は台湾独立運動の象徴として生き続けています。

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