台北州の概要
台北州(たいほくしゅう)は、
日本統治時代の台湾における行政区分の一つで、5州3庁制が敷かれていた時代に存在しました。現在の
台北市、
基隆市、
新北市、
宜蘭県を合わせた広大な地域を管轄しており、その中心は
台北市に置かれていました。州庁は現在の
監察院の建物が使用されていました。
昭和16年(1941年)の台湾常住戸口統計によると、台北州の総
人口は1,233,882人でした。その内訳は、
内地人(日本人)が153,928人、台湾人が1,053,372人、朝鮮人が1,051人、その他が25,531人となっています。
行政区分
1945年当時の台北州は、
台北市、
基隆市という二つの市と、七星郡、淡水郡、基隆郡、宜蘭郡、羅東郡、蘇澳郡、文山郡、海山郡、新荘郡といった複数の郡と街庄から構成されていました。
戦後の変遷
戦後、台北州は
台北県に改編され、
台北市と
基隆市は台湾省に移管されて
台北県から分離しました。1947年には、海山区が廃止され、管轄下の郷鎮は
台北県の直接管轄となりました。また、七星区と蘇澳区もそれぞれ
淡水区と羅東区に統合されました。1949年には、北峰区が設置され、原住民の居住地域は北峰区に移管されました。1950年には、全ての区が廃止され、旧区の管轄地域は
台北県と
宜蘭県に再編されました。これにより、旧新荘、海山、文山、基隆、淡水、七星区は現在の
新北市に、旧宜蘭、蘇澳、羅東区は現在の
宜蘭県に統合されました。
医療機関
台北州には、以下のような医療機関が存在しました。
臺北帝國大學醫學部附屬病院
赤十字社臺灣支部病院
臺灣総督府專賣局共濟組合病院
臺灣総督府鐵道局臺北鐵道病院
臺灣総督府宜蘭病院
臺灣総督府基隆病院
法院(裁判所)
昭和20年(
1945年)当時、以下の裁判所が設置されていました。
高等法院上告部
高等法院覆審部
臺北地方法院
臺北地方法院宜蘭支部
刑務所
昭和7年(1932年)には、以下の刑務所が運営されていました。
台北刑務所
台北刑務所宜蘭刑務支所
警察
昭和20年(
1945年)には、台北州警務部を筆頭に、複数の警察署や分署、郡警察課が配置されていました。これにより、広範囲にわたる地域の治安維持が図られていました。
税務
昭和11年(1936年)当時、基隆税関が設置され、税務行政を担っていました。
林政
昭和7年(1932年)には、
台湾総督府殖産局営林所が設置され、林業行政を行っていました。
専売局
昭和20年(
1945年)には、台北酒工場、板橋酒工場、樹林酒工場、台北煙草工場、松山煙草工場といった施設が運営され、専売事業が行われていました。
気象
昭和17年(1942年)には、
台湾総督府気象台と基隆測候所が設置され、気象観測が行われていました。
教育機関
台北州には、高等教育機関として
台北帝国大学(現
国立台湾大学)をはじめ、多くの専門学校や師範学校が存在しました。中等教育機関としては、台北第一中学校(現
台北市立建国中学)や台北第一高等女学校(現
台北市立第一女子高級中学)など、多くの学校が設置されていました。
日本軍駐屯地
昭和11年(1936年)の平時編制によると、
台北市には台湾軍司令部や台湾守備隊司令部、歩兵連隊や山砲連隊が駐屯していました。
基隆市には要塞司令部や重砲兵連隊が配置されていました。
鉄道
昭和19年(1944年)には、総督府鉄道の縦貫線、淡水線、
平渓線、宜蘭線が運行され、台北鉄道の萬華-新店線や日本鉱業金瓜石鉱山事務所の金瓜石線などの私設鉄道も存在していました。
道路
昭和14年(1939年)には、指定道路が整備され、交通インフラの向上が図られていました。
港湾
昭和13年(1938年)には、基隆港と淡水港が開港し、貿易や物流の拠点となっていました。
鉱山
台北州では、金瓜山鉱山、瑞芳鉱山などの鉱山が開発され、金、銀、銅などが採掘されていました。また、基隆炭鉱、瑞芳炭鉱などの炭鉱も重要な資源でした。
神社
台北州には、多数の神社が建立されていました。
国立公園
大屯国立公園と
次高タロコ国立公園が指定されていました。
企業
昭和7年(1932年)には、農林水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、運輸業、卸売小売業、金融業、不動産業、宿泊業など、多岐にわたる業種の企業が活動していました。
マスメディア
昭和20年(
1945年)には、台湾放送協会台北放送局がラジオ放送を行っていました。また、台湾日日新報などの日本語新聞も発行されていました。
出身有名人
金美齢(評論家)、
李登輝(政治家・元中華民国総統)、蔣渭水(政治家)、黄霊芝(作家)、李梅樹(画家)などが台北州出身または活躍した人物として挙げられます。
参考文献
秦郁彦編『日本官僚制総合事典:1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
関連項目
台湾総督府
日本統治時代の台湾行政区分
台湾の行政区分
台北市
基隆市
新北市
宜蘭県