史進道

史進道（し しんどう）

史進道（1179年 - 1243年）は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した人物です。彼は漢人でありながらモンゴル帝国に仕え、軍閥の一人として重要な役割を果たしました。字は道遠と称しました。

生い立ちとモンゴルへの帰順

史進道は、析津府永清県の出身です。彼の家系は、かつて唐朝に仕えて高位の官僚を輩出していましたが、唐の滅亡後に衰退し、地方の名家として存続していました。祖父の史倫が金塊を発見したことで再び裕福になり、史家の総領的地位を確立しました。史進道は、兄の史秉直とともに成長し、その人柄は目上の者だけでなく、身分の低い者にも敬意を払う高潔さで知られていました。

1211年、モンゴル帝国が金朝への侵攻を開始し、1213年には史進道の一族が住む永清県にもモンゴルの脅威が迫りました。史進道は、モンゴルの勢いを「天威」と捉え、抵抗は無意味であると考え、母親に相談しました。母親からは、天道に背くことなく身を守るように諭されたといいます。そこで史進道は、里の有力者や日頃から史家に恩義を感じていた貧しい人々にも呼びかけ、モンゴルに投降することを決意しました。彼らは、近くに駐屯していたムカリの軍に投降し、ムカリは史進道の人並み外れた才能を見抜き、配下に加えました。

モンゴル帝国への貢献

1214年、史進道はモンゴル軍本隊の中都包囲に参加しました。モンゴルと金朝の間で和約が成立すると、ムカリ軍とともに北方に進軍し、同年8月には史秉直や史天瑞ら一族とともに北京を包囲し、翌年3月までに陥落させました。1215年8月には、コルチ、ウヤルと共に興州・広寧を攻略し、その後、北京管下の義州節度使に任じられ、北京を統括しました。

1216年に錦州で張致が反乱を起こすと、1217年に史進道はムカリの指揮下に入り、張致を討伐しました。この功績により、遼西一帯はモンゴルの支配下に入り、史進道は広寧府留守、次いで北京留守に任命されました。北京留守はこれまで旧金軍を率いる女真人の寅答虎が務めており、史進道の就任は史氏一族が北京を実質的に支配するようになった象徴的な出来事でした。史進道が北京を統治して10年あまりが経過すると、史氏一族は真定路を新たな拠点とするようになり、史進道の娘婿である張之翼が北京管民長官万戸として北京の統治を引き継ぎました。

引退と晩年

1234年、史進道は官職を辞して引退し、真定路に移り住んで兄の史秉直に仕えました。そして1243年6月、自宅で65歳で亡くなりました。

史進道は、激動の時代において、一族の存続と繁栄のためにモンゴル帝国に帰順し、その才能を発揮することで、モンゴル帝国の北中国支配に大きく貢献しました。彼の生涯は、当時の社会情勢と人々の生き方を映し出す貴重な事例と言えるでしょう。

真定史氏

史進道の一族は、真定路を拠点として勢力を拡大し、真定史氏と呼ばれるようになりました。彼らは、モンゴル帝国の支配下で一定の自治権を認められ、地域の安定と発展に貢献しました。

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