右田紀久恵

右田 紀久恵（うだ きくえ）は、1931年2月11日に大阪府に生まれた、日本の著名な社会福祉学者です。

略歴

大阪府立大学名誉教授であり、長年にわたり社会福祉学の研究教育に貢献しました。

1953年に大阪市立大学家政学部を卒業後、同大学院の博士課程に進学しましたが、これを中退しています。その後も研究を続け、1985年には「英国における地方自治体社会福祉行財政の研究」という論文で、母校である大阪市立大学から学術博士の学位を授与されました。

教育・研究者としてのキャリアは多岐にわたり、1973年に大阪社会事業短期大学の教授に就任。その後、1981年には大阪府立大学の教授となり、1986年には同大学社会福祉学部の学部長を務めました。1994年に定年により大阪府立大学を退職し、名誉教授の称号を得ています。

国内での活動に加え、国際的な視点からの研究も積極的に行いました。1969年から1971年にかけて、ロンドン大学の客員研究員として海外での研究に従事し、さらにシェフィールド大学では客員教授として教鞭をとるなど、英国の社会福祉制度に関する深い知見を得ました。

大阪府立大学退職後も、東京国際大学教授、広島国際大学副学長・医療福祉学部教授などを歴任し、晩年まで教育・研究活動に情熱を注ぎました。

研究活動と業績

右田紀久恵の研究は、主に地域福祉、社会福祉の行財政、国際比較などを中心に進められました。特に、英国における社会福祉制度に関する詳細な分析は、日本の社会福祉政策のあり方を考える上で重要な示唆を与えるものでした。博士論文のテーマからもわかるように、地方自治体における社会福祉の仕組みや運営に関心を持ち、その研究成果は日本の地域福祉の発展に大きく貢献しました。

豊富な研究成果は多くの著作として結実しています。単著としては、『自治型地域福祉の理論』（ミネルヴァ書房、2005年）があり、地域福祉研究における重要な一冊となっています。

また、多数の共編著や監修を手がけていることも、その研究活動の広範さを示しています。「地域福祉」をテーマにした著作は特に多く、『現代の地域福祉』、『地域福祉 いま問われているもの』、『自治型地域福祉の展開』、『地域福祉総合化への途』など、様々な角度から地域福祉のあり方を探求しています。

地域福祉以外にも、児童福祉、社会保障、社会福祉の歴史、福祉財政論といった幅広い分野で著作活動を行い、『児童福祉概説』、『社会福祉の歴史』、『児童と社会保障』、『福祉財政論』などの共編著があります。

さらに、社会福祉学の体系的な理解を深めるための重要な編著にも関わっており、『講座社会福祉』（全7巻中の1巻）や、『地域福祉講座』（全7巻中の5巻）などのシリーズの一部を担当しています。2000年代に入っても、『21世紀への架け橋-社会福祉のめざすもの』（全3巻）や、『地域福祉の源流と創造』といった共編著を発表するなど、精力的な活動を続けました。2007年には『エンサイクロペディア社会福祉学』の監修にも携わっており、その学識の深さと広さがうかがえます。

海外の社会福祉理論を日本に紹介する活動も行い、J.H.ガルパーの『変革の社会福祉』を共訳しています。これらの著作活動を通じて、日本の社会福祉学の研究水準の向上と、多くの研究者・実務家の育成に貢献しました。右田紀久恵の業績は、日本の社会福祉学史において重要な位置を占めています。

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