吉原細見

吉原細見とは

吉原細見は、江戸時代に発行された吉原遊廓の案内書です。遊女の名前や所属する店、料金などを詳細に記したもので、現代で言うところのガイドブックのような役割を果たしていました。遊郭内を売り歩く「細見売り」によって販売され、庶民にとって遊郭の情報を得るための貴重な手段でした。

歴史

吉原細見の起源は、仮名草子の遊女評判記に遊女の名前を列挙したものとされています。初期のものは17世紀の貞享年間から見られ、18世紀の享保年間には定期刊行されるようになりました。1738年以降は、鱗形屋と山本の2つの版元が年2回刊行していましたが、後に蔦屋重三郎が鱗形屋に代わり刊行を引き継ぎました。この定期刊行は1880年代まで約160年間続き、『役者評判記』に次いで日本史上最も長期にわたる定期刊行物の一つとなりました。

内容

吉原細見には、遊廓の略地図、妓楼と遊女の名簿、料金、茶屋、船宿、男女芸者の名簿、年中行事などが掲載されていました。明治時代には写真付きの細見も作られました。これらの情報は、当時の遊郭の様子や文化を知る上で非常に重要な資料となっています。

変遷

吉原細見の原型は、寛永19年（1642年）に発行された「吾妻物語」であるとされています。これは、吉原の遊女の名簿を記したものでした。明暦の大火（1657年）後、新吉原に移転した後には、「吉原かがみ」や「吉原根元記」など、多くの関連書籍が出版されました。これらの初期のものは遊女の批評が中心で、後世の細見とは体裁が異なっていました。

延宝年間（1673-1681）頃から、一枚刷りの細見が登場し、天和、貞享を経て、元禄時代には、遊女のランク付けを明示したものが現れました。寛永年間には、遊女屋の紋所や家格を示す合印が記載されるようになりました。当時の太夫の数は、万治年間には37人、元禄15年には5人に減少しましたが、太夫格子の数は99人、その他総勢1750人以上の遊女がいたとされています。料金は、太夫が昼夜で74匁、太夫格子が52匁などと定められていました。

正徳2年（1712年）には、八文字屋版行の「傾城新色三味線」が江戸吉原の名簿を掲載し、享保3年（1718年）には蔦屋重三郎が折本仕立ての細見を販売して評判となりました。享保13年（1728年）には「新吉原細見之図」が発行され、横綴じの細見が流行しました。その後、竪本形式も登場し、安永年間には四六版のものが主流となり、明治時代まで続きました。

幕末から明治維新にかけて、細見の内容は粗雑化し、信頼性が低下しましたが、明治28年（1895年）以降は新吉原事務所が発行することとなりました。吉原細見は、江戸時代の遊郭文化を知る上で欠かせない貴重な資料であり、当時の人々の生活や文化を今に伝える歴史的な遺産です。

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