遊女

遊女の歴史と役割

遊女（ゆうじょ、あそびめ）は、古来から宿場や遊廓などで男性客に対して性的サービスを提供する女性のことを指します。現代では娼婦や売春婦とも呼ばれますが、遊女という言葉の意味はそれだけに留まらず、多岐にわたる歴史的背景があります。

古代中国の遊女

遊女という言葉は、古代中国では「妓女」として知られていました。『詩経』の中には、「漢に遊女有り、求むべからず」という表現が見受けられ、遊女は川辺で遊ぶ女性や川の女神を指すことがありました。これは、日本における遊女の語源にも関係があるとされており、遊ぶ女性の存在から派生したものと考えられています。特に古代中国では、「女郎」という呼称が「若い女性」を意味しており、遊女という概念とは一線を画していました。

日本における遊女の呼称と変遷

日本でも、歴史を通じて多くの呼称が用いられてきました。『万葉集』にさかのぼると、「遊行女婦（うかれめ）」という名が使用されており、平安時代になると「遊女」という呼称が登場します。「遊」という言葉は、当時の文化や芸能、歌舞と密接に関連していました。中世には、白拍子や傾城、傀儡女（くぐつめ）など様々な名前で呼ばれましたが、いずれも女性の役割は同様に客を楽しませるものでした。江戸時代になると、遊廓において遊女には上下関係が生じ、特に太夫（たゆう）と呼ばれる最高位の遊女が存在しました。彼女たちは高級な芸を披露し、客から特別な扱いを受けることがありました。

一般的に、遊女は湯屋や旅籠（はたご）で働くことも多く、宿場で食事や娯楽を提供しながら性サービスを行いました。一方で、遊廓には高級遊女だけでなく、大衆的な遊女も存在しました。たとえば、江戸や大阪では、街角で客を待つ辻君（つじぎみ）や、宿場で働く飯盛女（めしもりおんな）がその一例です。これらの女性は、時に遊女とは異なる社会的地位にありましたが、「遊女」「遊君」という言葉が使われた場合には、一般的に高い地位の女性を指すことが多かったのです。

琉球王国の遊女

沖縄の琉球王国では、尾類（ジュリ）と呼ばれる女性たちが、歌や踊りで貴人をもてなしました。彼女たちは時に売春を行いながらも、芸妓のように多様な芸を提供していた点が特徴です。

歴史的な背景と遊女の変遷

遊女の歴史は奈良時代から平安時代にかけて、神社や寺院での奉仕役から始まります。彼女たちは最初は神聖な存在として高い地位を占めていましたが、時代が進むにつれて性行為が経済的手段として商品化されていく過程で、遊女たちの社会的な立場は次第に変わっていきました。鎌倉時代以降の遊女に関する記録の中には、彼女たちが貴族や武士の母として生まれたことも示され、当時の社会における遊女の重要性を物語っています。

江戸時代に入ると、遊廓が公に整備され、江戸の吉原や大阪の新町、京都の島原など、多くの遊廓が設けられました。この時期、遊女たちはそれぞれの遊廓で独自の文化を形成し、特に江戸時代の遊女は高い技芸を持つ女性たちとして人気を博しました。

明治以降の変化と公娼制度

明治時代に入ると、遊女たちは解放される一方で、徐々に彼女たちの社会的地位は低下していきます。特に1872年の芸娼妓解放令により、多くの遊女が自由になったとされる一方で、現実には依然として売春による前借金の負担から逃れられない状態が続きました。その後も娼婦や遊女に関する法律が整備され、娼妓取締規則が制定されるなど、遊女という概念は法的にも変化を遂げていきました。

公娼制度も施行され、性病の検査が行われるようになりましたが、売春の実態が厳しい状況であったことは否めません。大正時代には、一定の地域に遊女が集められて遊廓が形成され、吉原を中心に多くの客が訪れるようになりました。戦後の1958年には売春防止法が施行され、遊廓は消滅していきました。

遊女たちの役割は、時代とともに変遷を重ね、その多様な姿は日本の文化や歴史に深く根付いています。彼女たちは単なる性の提供者ではなく、時には芸能の担い手として、また社会の一部として、長い間日本社会に存在し続けました。

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