吉屋信子

吉屋信子について

吉屋信子（よしや のぶこ、1896年1月12日 - 1973年7月11日）は、日本の小説家として1920年代から1970年代にかけて活躍した人物です。特に少女小説での成功を収めた後、家庭小説などさまざまなジャンルに渡って多くの著作を残しました。キリスト教的な理想主義と感傷的な描写により、彼女は女性読者に大きな支持を受けました。戦後の作品には『徳川の夫人たち』があり、こちらは女性史をテーマにした歴史小説として知られています。

生い立ちと経歴

新潟県に父・雄一と母・マサのもとに生まれた吉屋信子は、幼少期を新潟市で過ごしました。父は警察官として活躍しており、その後行政職に転職しました。彼女は栃木高等女学校に進学し、在学中に新渡戸稲造の講演を聞いて大きな影響を受け、文学への興味を深めました。初めて短歌や物語を少女雑誌へ投稿し、1910年には『少女界』の懸賞で受賞を果たすことで、ライターとしての道を模索し始めました。

1915年に東京へ上京し、作家を目指して活動をスタート。1916年には『花物語』を連載し、女学生たちの間で人気を博しました。1920年には初の長編作品『地の果まで』が発表され、文壇に登場しました。

私生活

信子は1923年に門馬千代（元相馬藩士の長女）と出会い、以降50年以上にわたって彼女の生涯の伴侶となりました。彼女たちは共に生活し、信子の作品の秘書としても活躍しました。信子は同性との関係を重視し、同性愛に関する作品も執筆しました。1937年の『良人の貞操』では、当時あまり意識されていなかった男性の貞操についての議論を呼び起こしました。

軍事協力と評価

1930年代の日本において、吉屋信子は『主婦之友』の特派員として中国に派遣され、戦地での体験を基にした取材記事を執筆しました。彼女の活躍は、大戦中の女性動員を促し、戦争への協力を強調するものでした。しかし、その従軍ライターとしての活動は、後に厳しい批判を受けることになりました。

近年、吉屋信子の作品は再評価されつつあり、「少女」論やフェミニズム文学として注目されています。特に、彼女の作品に描かれる女性の友情や同性愛は、当時の社会における制約の中で新たな表現の場を形成しました。

晩年と遺産

1973年に77歳で亡くなった信子は、晩年には歴史小説『徳川の夫人たち』や『女人平家』などを執筆し、女性の視点から歴史を描き続けました。死後、彼女の生涯や作品は記念館により紹介され、新たな文学的価値が見直されています。彼女の作品は、今なお多くの読者に影響を与え、後世に伝えられるべき膨大な文学的遺産となっています。

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