吉岡修一郎

吉岡 修一郎（1902年1月18日 - 1998年）は、日本の科学評論家として多岐にわたる分野で活躍しました。石川県に生まれ、学問への深い探求心を持ち続けました。

生涯と学歴

吉岡氏は、まず東北帝国大学で理学部に学びました。その後、1934年には九州帝国大学法文学部を卒業しており、自然科学と人文科学の両分野にわたる幅広い素養を身につけていたことがうかがえます。この多様な学びの経験が、後の評論活動の基盤となったと考えられます。

大学での教育・研究活動

第二次世界大戦後、吉岡氏は久留米大学の教授として教壇に立ちました。教育者としても熱心であり、研究活動にも力を注ぎます。1959年には、「人の性格に関する脳波学的研究」によって、久留米大学から医学博士の学位を授与されました。これは、単なる評論家にとどまらず、医学分野における専門的な研究成果も有していたことを示しています。久留米大学を定年退官した後は、九州産業大学の教授として、引き続き教育・研究に携わりました。

広範な評論活動と著作

吉岡氏の最大の功績は、専門的な内容を一般向けに分かりやすく解説した数多くの著作を発表したことにあります。数学、医学、哲学といった難解とされる分野を扱いながらも、平易な言葉で読者に届けようと努めました。その著作は、専門知識の啓蒙にとどまらず、科学と文化、社会との関わりを探求する視点も持ち合わせていました。

主要な著作には以下のようなものがあります。

『ゲシタルトの根本原理 ケーレル「物理的ゲシタルト」の解説 ゲシタルトの問題と学説』（内田老鶴圃、1935年）
『ベルグソンと科学精神』（野田書房、1936年）
『数学文化史』（河出書房、1938年）
『数とロマンス 数学随筆』（誠文堂新光社、1939年）
『論理学の新体系 形式論理学の根本的改造』（全国書房、1946年）
『日本人の科学思想の発展』（彰考書院、1949年）
『日常の数学』（小山書店、1951年）
『日本科学思想史概説』（彰考書院、1952年）
『おとなの問題児 あなたの性格を診断する』（内田老鶴圃、1961年）
『人間工学』（共立出版、1964年）
『現代のための哲学』（理想社、1969年）
『一億不衛生物語 まちがいだらけの消費生活』（サイマル出版会、1972年）
『医学概論』（医学出版社、1976年）
『現代ストレス病』（三晃書房、1977年）
『九州の科学者・思想家 現代日本文化の先駆者たち』（人間の科学社、1982年）
『子どもの成人病 なぜ患者が増えるのか』（三晃書房、1984年）
* 『科学者とユーモア』（学生社、1992年）

また、共著や翻訳も手がけており、井上忠氏との共著『日本科学史夜話』や、ベルグソンの『思想と動くもの』、『創造的進化』などの翻訳を通じて、海外の思想や科学理論の紹介にも貢献しました。

吉岡修一郎氏は、教育者、研究者、そして何よりも科学評論家として、生涯を通じて学問の普及と啓蒙に尽力しました。その広範な知識と分かりやすい筆致は、多くの読者に科学や哲学への関心を抱かせるきっかけを与えたと言えるでしょう。

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