吉川和夫

愛知県に生まれ、1954年10月9日に誕生した吉川和夫（きっかわ かずお）氏は、日本の現代音楽を代表する作曲家の一人です。

東京藝術大学大学院で作曲を学び、その課程を修了した吉川氏は、以後、作曲家としての道を歩み始めます。彼の創作活動は、特に室内楽や合唱劇に重点を置いて展開されてきました。これらの分野で数多くの作品を発表する一方で、日本の伝統的な声明や邦楽器を用いた新しいスタイルの作品も積極的に生み出しており、その音楽性は多岐にわたります。

吉川氏のキャリアにおける重要な受賞として、1996年にNHKで放送されたオーディオドラマ『ソフィーの世界』（蓬莱泰三脚色）の音楽を手がけた際に、放送文化基金賞（音楽・音声・音響効果賞）を受賞しています。この受賞は、彼の音響デザインと音楽表現が高く評価されたことを示しています。

また、作曲家グループ「緋国民楽派」の同人としても活動しており、他の作曲家たちと共に現代音楽の創作・普及活動にも携わっています。

主要な作品としては、宮沢賢治の世界を描いた合唱劇「ポラーノの広場」や「銀河鉄道の夜」、そして合唱童話「やまなし」などが挙げられます。さらに、混声合唱と和太鼓というユニークな編成による組曲「さくらのはなびら」、そして人間の感情を深く掘り下げた連作合唱曲「どうして あんなに」など、バラエティ豊かな合唱作品を発表しています。声明や邦楽器を用いた作品では、国立劇場から委嘱された聲明と狂言による「論義ビヂテリアン大祭」などがあります。

作曲活動と並行して、教育者としても貢献しています。作陽音楽大学で助教授を務めた後、宮城教育大学に移り教授として多くの学生を指導しました。現在は同大学の名誉教授の地位にあります。

彼の音楽はCDとしてもリリースされており、これまでに

トゥバラーマ～吉川和夫作品集
国立劇場委嘱作品シリーズ「論義ビヂテリアン大祭 聲明と狂言の語りによる」
* 魂の行方 吉川和夫作品集

といった作品集が発表されています。また、竹田恵子氏によるオペラ「にごりえ」の一部音楽もCD化されています。

吉川和夫氏は、室内楽、合唱、声明、邦楽器など、幅広い分野で質の高い音楽作品を生み出し続け、日本の現代音楽界において独自の存在感を示しています。教育者としても多くの音楽家を育て、その貢献は多岐にわたります。

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