吉川潮

吉川 潮（よしかわ うしお）氏は、1948年8月1日に茨城県で生まれました。多彩な顔を持つ文筆家、評論家として知られ、その活動は演芸評論、小説執筆、コラム、ルポルタージュ、そして放送作家にまで及びます。

幼少期は茨城県下館町（現在の筑西市）で育ちました。父親は長唄の岡安喜三四郎氏で、日本の伝統芸能が身近にある環境でした。姉と妹がおり、この三姉妹の名付け親は著名な詩人である西條八十氏という、非常にユニークな家族背景を持っています。

立教大学経済学部を1971年に卒業後、吉川氏はルポライターとしての活動を開始します。同時に放送作家としても才能を発揮し、「青島幸男のお昼のワイドショー」など、数々の番組構成を手がけました。その傍ら、1979年には演芸評論家として本格的に活動を開始し、鋭い視点と独自の切り口で多くの演芸評やコラムを執筆するようになります。

翌1980年には、文芸誌『小説現代』で小説家としてのキャリアもスタートさせました。小説家としては、特に落語家や浪曲師、俳優といった芸人の一代記や、芸能界の人間模様を描いた作品を多く発表しています。代表作として、落語家春風亭柳朝の生涯を描いた『江戸前の男―春風亭柳朝一代記』は第16回新田次郎文学賞を受賞。また、詩人西條八十の人生をたどった『流行歌 西條八十物語』は第18回尾崎秀樹記念・大衆文学研究賞（評論・伝記部門）を受賞するなど、文学界でも高い評価を得ています。他にも、『狼の眼』や『斬り込み―平成残侠伝』といった作品は映画化もされています。

文筆活動に加え、日本文芸家協会の会員として文学界に貢献する一方、俳句の創作も行っており、駄句駄句会の同人として「駄郎（だろう）」という俳号を持っています。

プライベートでは、粋曲（色物）で知られる柳家小菊氏を妻に持ち、演芸の世界との深いつながりを感じさせます。また、かつては落語立川流の顧問という立場で、故・立川談志氏とも親交が深く、その関係や談志氏について記した著書もありますが、2014年11月に立川流顧問を辞任しています。

多岐にわたる分野で活躍を続ける吉川潮氏は、日本の演芸・芸能文化の語り部として、また人間味あふれる物語紡ぎ手として、現在も精力的な活動を展開しています。

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