吉村華泉

𠮷村華泉（よしむら かせん）は、1928年2月26日に東京で生まれ、2015年1月18日に86歳で亡くなった、いけばなの世界で重要な役割を果たした人物です。いけばな龍生派の三代目家元として、その流派の発展に尽力しました。

華泉は、二代目家元であった吉村華丘の死去に伴い、1944年に龍生派の家元を継承しました。その後、日本いけばな芸術協会の理事長、いけばな協会の理事長を歴任し、晩年まで両協会の相談役を務めました。これらの要職を通じて、いけばな界の発展に大きく貢献しました。

華泉のいけばなの最も重要な思想の一つに「植物の貌」があります。これは、植物の形や色を画一的に捉えるのではなく、一本の枝や花が持つ個性を重視し、それらを作者の感性によって表現することを提唱したものです。この考え方は、龍生派のカリキュラムの基幹となり、多くのいけばな作家に影響を与えました。

華泉は、国内外で数多くのいけばなデモンストレーションを行いました。1967年のモントリオール万博日本館での作品展示とデモンストレーションをはじめ、1978年のイケバナ・インターナショナル　オーストラリア・ニュージーランド地区大会、1982年の北米大会など、国際的な舞台でも活躍しました。1986年には、来日したダイアナ英国妃に、いけばなを披露するという貴重な機会もありました。

また、華泉は多くの展覧会にも参加しました。1949年の「文部大臣招待日本花道展」を皮切りに、「東京都美術展」や「現代いけばな代表作家展」などに出品しています。1979年には個展「透明光体‐桜」を開催し、1989年には「原生花艶展」で、吉村京子、吉村隆と共に作品を展示しました。これらの展覧会を通じて、その独創的な作風を広く紹介しました。

華泉は、著書を通じていけばなの普及にも貢献しました。1958年の『吉村華泉作品集』を皮切りに、『いけばなグラフィック龍生派』、『龍生派の生花と立華』、『いけばな全書 龍生派』など、多数の著書を出版しました。特に、『植物の貌』は、そのいけばなに対する思想をまとめた重要な一冊として知られています。これらの著書は、いけばなを学ぶ人々にとって貴重な資料となっています。

𠮷村華泉は、いけばなの世界において、革新的な思想と卓越した技術を持った人物でした。その功績は、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。

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