吉武栄之進

吉武栄之進は、1864年（元治元年）に信濃国松本（現在の長野県松本市）で生まれました。松本藩士の長男として、幼少期から学問に励み、開智学校を経て東京大学予備門に進学しました。1884年に東京大学を卒業後、教職の道に進み、東京府第一中学校や東京師範学校で教鞭を執りました。その後、第二高等学校教授、東京高等工業学校教授などを歴任し、理化学の分野で多くの学生を指導しました。

1932年には、文部省の命により、毛染めや毛織物捺染法、仕上げ法の研究のために、イギリスとドイツに3年間留学しました。欧州での先進的な技術を学び、帰国後は再び東京高等工業学校で教鞭を執る傍ら、文部省視学官としても活躍しました。1920年には東京高等工業学校校長に就任し、1923年には東京高等工芸学校校長も兼任するなど、教育者としても手腕を発揮しました。

吉武栄之進は、日本の染織工業技術の研究と教育に情熱を注ぎ、その発展に大きく貢献しました。また、工業界の発展にも尽力し、大日本織物協会理事長や日本化学会長などの要職を歴任しました。これらの功績が認められ、勲二等旭日重光章を受勲しました。

彼の業績は、日本の近代工業の発展に欠かせないものであり、後世に大きな影響を与えました。教育者として、また研究者として、その生涯を日本の技術発展に捧げた吉武栄之進の功績は、今もなお語り継がれています。

参考文献

『信濃人物略志』1919年
『長野県歴史人物大事典』 郷土出版社、1989年

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