吉沢やすみ

吉沢やすみ：漫画家人生の浮沈と『ど根性ガエル』の影と光

1950年、山梨県に生まれた吉沢やすみ氏は、ギャンブルで失踪した父親の不在の中、母子家庭で育ちました。山梨県立日川高等学校卒業後、後輩にプロレスラーのジャンボ鶴田氏を持つ同高校時代から同人作家として活動を始め、漫画家・貝塚ひろし氏主催の同人誌に参加していました。高校卒業後、「絶対マンガ家になる」と上京し、師事した貝塚氏のもとで研鑽を積みました。

1970年、20歳の時、貝塚氏の紹介で『週刊少年ジャンプ』に投稿した読み切り作品『ど根性ガエル』（吉沢保己名義）が、編集長の目に留まり、連載へと繋がりました。この作品は、たちまち大ヒットを記録し、アニメ化も二度に渡り実現。若き吉沢氏は23歳でマイホームを手に入れるほどの成功を収めます。しかし、この成功は長くは続きませんでした。税理士のずさんな会計処理による追徴課税、そしてギャンブルへの傾倒により、莫大な富は数年で消え去ってしまいます。

『ど根性ガエル』後の作品はヒットに恵まれず、吉沢氏はスランプに陥り、プレッシャーと闘う日々を過ごしました。ペンを持つと手が震え、吐き気をも催すようになり、思うように作品が描けなくなります。一時的な復活を遂げた『新・ど根性ガエル』の連載終了直後には、深刻な精神的苦痛から3ヶ月間の失踪。ギャンブルに溺れ、自殺未遂にまで至るなど、どん底を経験しました。その後は、看護師である妻の支えを得ながら、警備員や清掃員として生計を立てていた時期もありました。

転機は1990年代に訪れます。テレビドラマ『ひとつ屋根の下』で主人公がピョン吉のTシャツを着ていたことから、『ど根性ガエル』が再注目されたのです。その後、ピョン吉はパチンコ・パチスロ機やCM、ユニクロのTシャツなど、様々な場面でキャラクターとして起用され、版権収入が吉沢氏の生活を支えるようになりました。麻雀をこよなく愛する吉沢氏は、麻雀大会で2位を獲得するなど、充実した日々を送っていました。息子の康宏氏との公園でのスケッチ、漫画家である娘・大月悠祐子氏との複雑な関係性など、家族とのエピソードも人生の大きな部分を占めています。

2016年には脳卒中を発症し、左半身麻痺や視覚障害の後遺症を負うも、リハビリに励み回復を続けています。2023年には、作品の著作権管理を個人会社『株式会社ど根性カンパニー』に移管し、公式ウェブサイトとTwitterアカウントを開設。Twitterでは『ど根性ガエル』の雑学や近況を毎日発信しています。

吉沢やすみ氏の作品は『ど根性ガエル』以外にも多数存在し、『べらんめぇホームズ』『やっちん』など、様々な雑誌で連載されました。また、読み切り作品も多数手がけており、その幅広い創作活動は漫画史に大きな足跡を残しています。手塚治虫氏からも絶賛されたという逸話は、吉沢氏の才能の高さを物語っています。現在も、版権収入や公式アカウントの運営を通じて、漫画家として、そして『ど根性ガエル』の生みの親として、活動を継続しています。

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