吉田一穂

吉田一穂について

吉田一穂（よしだ いっすい、1898年8月15日 - 1973年3月2日）は、日本の詩人、評論家、そして童話作家として知られ、大正から昭和にかけて活躍しました。本名は由雄（よしお）です。彼の人生は北国・北海道の自然と文化に深く根ざしており、その影響は彼の作品に色濃く現れています。

生い立ちと教育

吉田は北海道上磯郡木古内町の漁師の家に生まれましたが、1905年に後志国古平町に移りました。彼の少年期はこの古平町で過ごされ、自然の美しさと漁業に従事する人々とのふれあいが、後の詩的感性に影響を与えたと考えられます。16歳で北海中学校を退学後、東京の海城中学へと進学し、1918年には早稲田大学高等予科文科に入学しました。この時期から「一穂」という名前を使い始めますが、彼の学業は実家の火災によって中断され、1920年には早稲田大学を退学しました。その後、彼は主に詩人としての道を歩むことになります。

詩人としての活動

彼の詩人としての活動は、20代の頃から本格化し、三木露風や北原白秋、島木赤彦に師事していました。また、1926年には金子光晴らと共に日本詩人会を創設し、この時期から詩集や童話集を次々と発表しました。特に一穂が愛してやまなかった古平を「白鳥古丹」と呼び、故郷への深い愛情が彼の詩のテーマに織り込まれています。このように、彼の詩歌は「北海道」にその根を持ち、「極北の詩人」と称される所以でもあります。

主要な作品

吉田一穂の主な作品には、1924年に発表された第一童話集『海の人形』、1926年の第一詩集『海の聖母』、また1930年の第二詩集『故園の書』や1936年の第三詩集『稗子伝』などがあります。彼の作品の中で特に称賛されているのは、1948年に発表された詩集『未来者』に収録された「白鳥」という詩です。この詩はダイナミックな構成が特徴で、36行の中に深い象徴を織り交ぜながら広がりを見せています。
また、詩『北海』は、エドガー・アラン・ポーの作品を想起させる内容であり、その詩想は高揚感にあふれています。

晩年と遺産

吉田一穂は1973年、心不全により東京都豊島区雑司が谷の病院で74歳で亡くなりました。彼の墓所は古平町の禅源寺にあり、戒名は白林虚籟一穂居士です。彼の詩や童話に関する資料は小樽文学館に保存されています。また、古平町には彼が作った詩碑や鎮魂歌碑が存在し、地域の文学文化における彼の足跡を示しています。彼の息子である吉田八岑は悪魔研究家として知られています。

文献と資料

彼に関する著作としては、『吉田一穂大系』（1970年）、『吉田一穂全集』（1979年）、『吉田一穂詩集』（1989年）などがあります。学問的な研究も進められており、詩人吉田一穂の世界についての伝記や研究書も複数存在します。これらの出版物は、彼の作品を深く理解するための貴重な資料となっています。

吉田一穂の文学は、その地域性と独自の視点から生まれたものであり、今後も多くの人々に読み継がれることでしょう。

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