吉田兼亮

吉田兼亮：赤穂浪士の知略と武勇を兼ね備えた重鎮

吉田兼亮は、江戸時代前期、寛永17年（1640年）に笠間藩主・浅野長直の家臣の子として生まれました。父は吉田之貫、母は備中松山藩水谷家家臣の娘です。赤穂藩への移封後、兼亮は足軽頭として仕え、軍学や槍術を学びました。

彼は寛文3年（1663年）に結婚し、複数の子供をもうけました。また、寛文12年（1672年）には8歳の寺坂信行を奉公人として迎え入れました。貞享3年（1686年）には播磨国加東郡の郡代となり、200石を知行、寺坂信行も配下として従えました。

元禄14年（1701年）3月14日、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ事件が発生。浅野長矩は切腹、赤穂藩は改易されました。兼亮はすぐに赤穂城へ駆けつけ、大石良雄らと共に藩政の残務処理に尽力しました。赤穂城落城後は三木町に移り住みました。

その後、兼亮は兵学を学び、討ち入り賛成派と反対派の双方を繋ぐ難しい立場にありました。元禄15年（1702年）には、近松行重と共に江戸へ下り、仇討ちを主張する急進派を説得するなど、重要な役割を果たしました。田口一真という変名を使い、江戸から京都の大石への情報伝達も担いました。大石の江戸下向時には、鎌倉まで迎えに行き、川崎での滞在先の準備もしました。

元禄15年12月15日未明、吉良邸への討ち入りが行われました。兼亮は裏門隊の大将である大石良金の補佐を務め、吉良義央を発見するまで同志を叱咤激励しました。討ち入り後、大石の命により富森正因と共に、仙石久尚へ口上書を提出しました。その後、大石良雄と共に熊本藩主・細川綱利の下屋敷に預けられました。細川家の家臣、堀内重勝との交流では、兼亮の人となりを知るエピソードが残されています。

元禄16年（1703年）2月4日、兼亮は切腹しました。享年64。浅野長矩と同じ泉岳寺に葬られました。

兼亮の四男、吉田伝内兼直は流刑先の伊豆大島で開墾に従事し、後に和尚となりました。また、兼亮の長女の墓は廃寺となった永仙院にありました。

兼亮は体格が大きく、容貌も堂々としていたと伝えられています。酒が飲めず、細川家での預かり役であった堀内重勝との逸話も残っています。石高は200石と、他の赤穂浪士に比べれば少ないものの、武芸に秀で、人望も厚く、大石良雄の次に信頼された人物でした。藩札の処理にも尽力するなど、多方面で活躍しました。一方で、曾孫にあたる人物からは、大嘘つきと評されたという記録もあります。

吉田兼亮は、武勇だけでなく知略にも長け、赤穂浪士の討ち入り成功に大きく貢献した、重要な人物であったといえるでしょう。彼の人生は、忠義と困難、そして人間的な魅力に満ちたドラマティックなものでした。

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