吉田満

吉田 満（よしだ みつる）

吉田満は1923年に生まれ、1979年に逝去した日本の作家であり、日本銀行の職員だった。彼の人生は、戦艦「大和」での経験や、キリスト教への入信などが色濃く影響を与えている。特に、吉田の代表作『戦艦大和ノ最期』は多くの人々に読まれ、映画化やドラマ化もされるなど大きな評価を受けている。

生い立ちと学徒出陣

吉田は東京市赤坂区に生まれ、関東大震災後に渋谷に移った。また、父は商事会社を経営し、その後独立して電設工事会社を設立した。1942年、東京帝国大学法学部に入学するも、1943年の学徒出陣により海軍に志願し、二等水兵としての生活が始まる。1945年には戦艦「大和」に副電測士として乗艦し、沖縄へ向かう戦闘に参加。その際の厳しい体験が彼の作家としての原動力となった。

戦後の生活と作家活動

1945年の敗戦後、吉田はしばらく疎開先に住んでいたが、のちに父の友人である作家・吉川英治のもとを訪問し、自身の体験を語る。彼の経験を記録した『戦艦大和ノ最期』は、驚くほど早く完成し、その後、検閲に遭うも様々な形で発表されることとなる。1945年には日本銀行に入行し、そこでの仕事と並行して執筆活動も続けた。

キリスト教への道

吉田は作家活動をしている際、今田健美神父からの誘いを受け、キリスト教に対する無知と反感を抱いていた彼が初めて神父との対話を通じて心を動かされる。この経験が彼の信仰の入口となり、1948年には洗礼を受けてカトリック信徒となる。銀行内でも信仰に関連した活動を主宰し、吉田自身が脚本を手がけた戯曲「犠牲」がクリスマスに上演されるなど、彼の信仰は作品にも色濃く反映されていった。

哀しみと再生

1949年には結婚し、家庭を持ちますが、27歳のとき、バドミントン中に事故に遭い眼球を失います。この出来事は彼にとって深い悲しみであったが、同時に作品創作への情熱を駆り立てる要因ともなりました。彼はその後も多くの作品を発表し続け、特に『戦艦大和ノ最期』の改訂版が1952年に出版され、多くの読者に感動を与えたのです。

晩年と遺産

1978年、吉田は体調を崩し入院しますが、その間も執筆活動を続けました。入院中に書かれた最後のエッセイ「戦中派の死生観」は、彼の信念や生きざまを凝縮したものであり、死後に出版されました。彼が残した著作や言葉は、戦争の記憶と信仰の大切さを伝える貴重な文化遺産として、多くの人々に読み継がれています。

吉田満は、徴兵制度のもとでの戦争体験と信仰という二つの軸で自らの人生を生き、その後の日本社会に対する訴えを続けました。戦記作家としての彼の活動は、単なる戦争の記録ではなく、人間存在に対する深い洞察を含んだものとして今も人々の心に響き続けています。

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