吉田道

吉田 道

1975年（昭和50年）1月15日、静岡県磐田郡豊田町（現在の磐田市）に生を受けた吉田 道（よしだ とおる）は、元プロ野球選手であり、現在は高校野球の指導者、そして教員として後進の育成に力を注いでいます。

彼の野球キャリアは、東海大学付属相模高等学校（神奈川県）で本格化しました。エースピッチャーとして才能を開花させ、1992年には第64回選抜高等学校野球大会にチームを導きます。甲子園の舞台で、吉田投手は快進撃を見せました。1回戦、2回戦を順調に勝ち進み、準々決勝では強豪として知られるPL学園高校（大阪府）と対戦。後にプロ野球で活躍する松井稼頭央選手や今岡誠選手らを擁する強力打線を相手に、見事なピッチングで2対0と完封勝利を収めます。この勢いのまま準決勝も突破し、決勝では三澤興一投手を擁する帝京高校（東京都）との緊迫した投手戦となりました。惜しくも2対3で敗れ、チームは準優勝に終わりましたが、吉田投手は大会を代表する投手の一人としてその名を刻みました。同年夏の全国高等学校野球選手権神奈川大会では、準々決勝で横浜商業高校に敗れ、春夏連続での甲子園出場は叶いませんでした。

高校卒業後、吉田氏は1992年のプロ野球ドラフト会議において、近鉄バファローズから2位指名を受け、プロの世界へと足を踏み入れました。しかし、プロ入り後は度重なる故障に見舞われ、育成期間を経て迎えた現役生活では、残念ながら一度も一軍公式戦のマウンドに立つことはできませんでした。志半ば、1996年にユニフォームを脱ぐこととなります。

現役引退後、吉田氏は故郷である静岡県浜松市へと戻りました。新たな道として競輪選手を目指し、競輪学校の受験に挑みましたが、合格には至らず、その道を断念せざるを得なくなりました。その後は、実家の稼業に携わることになります。母親が営む居酒屋「甲子園」の経営や、父親が経営するラーメン店「ラーメン竜」を手伝うなど、飲食業界で経験を積みました。このラーメン店で、柔らかく超厚切りが特徴的な名物「浜松焼豚（ハママツチャーシュー）」の考案にも関わったとされています。

飲食業に従事する傍ら、吉田氏の心の中には野球への熱意が消えることはありませんでした。地元の野球塾「西島ベースボールクラブ」で中学生たちに野球を指導する機会を得たことで、再び指導者としての道を強く意識するようになります。特に、自身が青春時代を過ごした高校野球の指導者を目指したいという思いが募りました。しかし、当時の学生野球資格を回復し、高校野球の指導者となるためには、高等学校の教員として2年以上の勤務経験が必須という要件がありました。このハードルを乗り越えるため、吉田氏は2000年から日本大学通信教育部に入学。働きながら5年もの歳月をかけて学び続け、高等学校の社会科と情報科の教員免許状を取得しました。

教員免許を取得した後、吉田氏は2009年より静岡県浜松市天竜区にある静岡県立天竜特別支援学校で常勤講師として教壇に立ちました。教育者としてのキャリアを積み重ねる中で、2011年には学生野球資格回復に関する規則が改正され、教員としての勤務経験年数の要件が緩和されたことで、晴れて高校野球の指導者となる資格を得ることになります。この資格回復を受け、2012年4月には浜松学院高等学校に社会科教員として着任しました。そして、同年7月には満を持して同校野球部の監督に就任。母校ではないものの、同じ高校野球の舞台で、自身の経験と情熱を注ぎ込み、選手の育成とチーム強化に尽力しています。

プロ野球選手としては不本意な結果に終わったものの、引退後に異分野での経験を積み、教育者としての道を切り開き、再び野球指導の現場に戻ってきた吉田氏。その波瀾万丈なキャリアは、多くの人々に勇気と示唆を与えています。

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