吉良の仁吉

吉良の仁吉（きらのにきち）

吉良の仁吉（本名：太田 仁吉、1839年 - 1866年）は、幕末期に活躍した侠客であり、清水次郎長の兄弟分として知られています。

生涯

三河国吉良横須賀（現在の愛知県西尾市吉良町）で、没落武士の子として生まれました。口数は少ないものの、腕っぷしが強く、相撲も得意でした。相撲での喧嘩がきっかけで、侠客の親分である寺津の間之助に匿われ、18歳から3年間を清水次郎長の下で過ごします。次郎長とは兄弟の盃を交わすほど親密な関係を築き、その後、故郷の吉良に戻り、吉良一家を興しました。

侠客の穴太徳次郎が、次郎長一家が世話をしていた伊勢の吉五郎の縄張りである伊勢荒神山を奪ったことがきっかけとなり、仁吉は「荒神山の喧嘩」に参戦します。仁吉は、徳次郎の手下や仲介者の申し出を断り、吉五郎側につきました。喧嘩は吉五郎側の勝利に終わりましたが、仁吉は鉄砲で撃たれた上、斬られて命を落としました。享年28歳でした。

人物

義理に厚く、若くして亡くなった仁吉は、その生き様が多くの人々の心を打ち、後世、講談や浪曲、演劇、映画、歌謡曲など、様々な作品の題材として取り上げられるようになりました。荒神山の喧嘩に吉五郎側として参加した松廼家太琉が、講談師の三代目神田伯山に当時の様子を伝え、さらに伯山の講談を浪曲師の二代目広沢虎造が浪曲にしたことで、広く知られるようになりました。

しかし、多くの作品が作られた影響で、史実と創作が混ざって伝えられています。例えば、芝居や映画では、仁吉が徳次郎の妹であるお菊を妻に娶るものの、吉五郎を助けるために離縁したという設定が見られますが、実際には仁吉に結婚歴はありません。これは、後世に創作されたものと考えられています。

墓碑

仁吉の墓は、一周忌に次郎長が太田家の遺族と共に建立したものが、現在も生誕地の吉良町にある源徳寺に残っています。吉良町では、仁吉を尾崎士郎、吉良義央と並ぶ「吉良三人衆」の一人として捉え、毎年6月には墓前祭を兼ねた「仁吉まつり」が開催されています。

関連項目

森の石松
人生劇場 - 尾崎士郎の自伝的小説。吉良の仁吉の血を引く侠客「吉良常」が登場します。
歌謡曲「人生劇場」 - 「吉良の仁吉は男じゃないか 俺も生きたや 仁吉のように」という歌詞があります。

外部リンク

西尾観光ホームページ「源徳寺」:http://nishiokanko.com/list/shop/gentokuji

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