吉良義安

吉良義安：激動の戦国時代を駆け抜けた三河の武将

吉良義安は、戦国時代の三河国に生きた武将であり、その生涯は波乱に満ちていました。彼は、三河吉良氏という一族の中でも、西条吉良氏と東条吉良氏という二つの系統の狭間で、複雑な運命を辿ることになります。

生い立ちと家督相続

天文5年（1536年）、吉良義安は西条城主・吉良義堯の次男として生を受けました。母は今川氏親の娘ではなく、後藤平太夫の娘であるとする説が有力です。当初、西条吉良氏の家督は兄の吉良義郷が継ぎ、義安は東条城主・吉良持広の婿養子となりました。しかし、兄の早逝により西条吉良氏に戻り家督を継承。さらに、東条吉良氏の当主・持広の死後、弟の吉良義昭に西条の家督を譲り、自らが東条吉良氏の家督を継ぎました。この一連の相続劇は、当時の吉良氏を取り巻く複雑な状況を物語っています。

今川氏との関係と人質時代

天文18年（1549年）、今川義元が尾張の織田信広を攻めた際、義安は織田家に協力。これが原因で今川軍に捕らえられ、駿府へ人質として送られることになります。この時、今川義元は西条吉良氏の義昭に東条吉良氏も継がせ、吉良氏を統一して今川家の支配下に組み込もうとしました。また、この頃、義安の祖父と推定される後藤平太夫が反今川の首謀者として処刑されたとも伝えられています。

義安は、その後10年余りを駿府で人質として過ごすことになりました。しかし、この時期に同じく人質であった松平竹千代（後の徳川家康）と親交を深め、弘治元年（1555年）に家康が元服した際には理髪役を務めたという逸話が残っています。この出会いは、後の義安の人生に大きな影響を与えることになります。

桶狭間の戦いと帰還、そして再びの幽閉

永禄3年（1560年）6月、桶狭間の戦いで今川義元が戦死したため、義安は家康と共に人質から解放され三河に戻りました。しかし、『寛政重修諸家譜』によれば、永禄4年（1561年）、今川氏真は義安の謀反を疑い、駿河に抑留したとされています。この時、代わりに義昭が東条に移され、両吉良氏を併せたとも記述されています。また、近年の研究では、弘治年間、義安は一旦は赦免され帰国したものの、再度今川氏に対して挙兵したため三河を追放されたという説も存在します。小林輝久彦氏の研究では、義安は織田氏と結びついて反乱を起こし、今川義元が織田信長と和睦しようとしたものの失敗したため、尾張に逃れ、さらに斯波義統や石橋氏と信長排斥を企て、尾張からも追放され三河に帰国したところ、今川氏真によって再度幽閉されたとしています。

徳川家康との関係と吉良氏の統一

一方、弟の吉良義昭は今川氏の後援を失い、孤立。永禄5年（1562年）、三河一向一揆を起こし徳川氏と戦うも敗北し、三河から逃亡しました。この後、家康は義安に東条西条の吉良氏を統一して領有することを認め、吉良氏は再び義安のもとに統一されることになりました。

義安のもとに統一された三河吉良氏は、徳川家に仕え、後の吉良義央の代に赤穂事件で改易されるまで存続することになります。義安の生涯は、戦国時代の激しい変遷の中で、複雑な人間関係と権力闘争に翻弄された武将の姿を今に伝えています。

まとめ

吉良義安は、戦国時代の三河国で、西条吉良氏と東条吉良氏という二つの家を束ねた武将です。今川氏の人質時代に徳川家康と出会い、その後の人生で重要な役割を果たしました。彼の生涯は、戦国時代の複雑な権力構造と、武将たちの生き様を映し出しています。

参考文献

小林輝久彦「天文・弘治年間の三河吉良氏」『安城市歴史博物館研究紀要』12号、2012年。
大石泰史 編『今川義元』戎光祥出版〈シリーズ・中世関東武士の研究 第二七巻〉、2019年6月。
谷口雄太「戦国期における三河吉良氏の動向」『戦国史研究』66号、2013年。
谷口雄太『中世足利氏の血統と権威』吉川弘文館、2019年11月。

外部リンク

吉良義安の木像 - 西尾市公式ウェブサイト

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