織田信広

織田信広：数奇な運命を辿った信長の異母兄

織田信広は、戦国時代に尾張の戦国大名・織田信秀の庶長子として生まれました。信長の異母兄にあたり、幼名は三郎五郎、後に大隅守を称しました。母は側室で身分が低かったため、信広は織田家親族衆としての扱いを受け、津田信広と表記されることもありました。生年は不明ですが、信長より5、6歳年長であったと考えられています。

若き日の戦歴と安祥城主

信広は若くして父・信秀に従い各地を転戦しました。1548年の第二次小豆坂の戦いでは先鋒を務めましたが、今川勢との激戦で一時退却を余儀なくされました。その後、織田軍は盛り返したものの、伏兵に苦戦し、最終的に安祥城へと退きました。信秀は信広を安祥城の城主とし、守備を任せて清須城へ帰還しました。

安祥城の陥落と人質交換

1549年、信広の守る安祥城は今川義元率いる大軍に攻められました。激戦の末、城は陥落し、信広は捕虜となりました。この時、信長は後詰として鳴海砦まで進軍していましたが、落城を知り撤退しました。今川勢は信広と、織田方が人質として捕らえていた竹千代（後の徳川家康）との人質交換を提案し、信長はこれに同意。信広と竹千代の人質交換は、織田家にとって西三河支配の拠点を失う痛手となり、松平家の勢力が増すこととなりました。

信長への謀反と赦免

1552年に信長が家督を継ぐと、信広は異母弟に仕えることになります。しかし、1556年頃、信広は美濃の斎藤義龍と組んで清洲城を乗っ取ろうと謀反を計画しました。信長が軽々しく出陣する隙を狙い、留守居役を殺害して城を乗っ取り、美濃勢と呼応する計画でしたが、信長の警戒により未遂に終わりました。信長は信広を赦免しましたが、その経緯は不明です。

織田家連枝衆としての活躍

信広は赦免後、信長に忠実に仕え、織田家連枝衆の中でもまとめ役として活躍しました。1568年の信長上洛戦にも従軍し、翌年からは京都に常駐し、公家や将軍足利義昭との折衝役を務めました。この頃、大隅守を名乗り、津田三郎五郎と称しました。

その後の戦いと最期

1570年には、比叡山包囲のため、将軍義昭軍とともに山城国の勝軍城に配置されました。1572年には岩村城の救援に参戦しましたが、城は落城しました。1573年には、信長と不和になった義昭との和議交渉で信長の名代として活躍しました。1574年の伊勢長島攻めでは、篠橋の砦を攻撃し、一揆勢を追い詰めましたが、信長が降伏した一揆勢を騙し討ちにした際に、信広も戦死しました。享年42、43歳頃とされています。

子孫

『織田系図』には信広の子は記載されていませんが、『寛政重修諸家譜』などには娘がおり、信長の養女として丹羽長秀に嫁いだ深光院（桂峯院）がいます。彼女は丹羽長重、稲葉典通の生母であり、その血筋は現在の皇室にも繋がっているとされています。

関連作品

信広を題材にした小説や漫画も存在します。

小説：いせひこ、大沼田伊勢彦『織田家の長男に生まれました』
漫画：大沼田伊勢彦、逸見兎歌、平沢下戸『織田家の長男に生まれました: 戦国時代に転生したけど、死にたくないので改革を起こします』



信広は、信長の異母兄でありながら、数奇な運命を辿った武将でした。その生涯は、戦国時代の激動と、織田家の複雑な人間関係を映し出しています。

もう一度検索