吉里吉里人

『吉里吉里人』の概要

『吉里吉里人』は、井上ひさしによる長編小説で、1973年から1974年にかけて一部が連載され、1981年に単行本として刊行されました。舞台は架空の村「吉里吉里国」であり、この村が日本の不当な政策に抗議して分離独立を宣言する物語が展開されます。しかし、独立からわずか2日でその体制は崩壊してしまいます。

作品の背景

1970年代の日本において、社会的な混乱や地方の反発が広がる中、この作品は創作されました。井上は1964年に放送劇を執筆し、その後、そのアイデアを基に小説を手掛けることになります。しかし、初期の雑誌連載は休刊に伴い未完に終わりました。1978年に連載が再開され、新潮社からの刊行に至りました。作品には吉里吉里語という方言が用いられ、言語の重要性が強調されています。

あらすじ

物語は、三文小説家の古橋健二が編集者の佐藤と共に夜行列車『十和田3号』に乗っているところから始まります。彼らが取材をしようとしていると、突如として吉里吉里国が日本から独立宣言をするのです。独自の通貨「イエン」や、公用語吉里吉里語を採用し、人口4187人の小さな国は、自給自足を目指します。しかし、独立を認めない日本政府からさまざまな妨害に直面しながら、村人たちは奇想天外な戦略を駆使して存続を試みます。

吉里吉里国は、独自の高度な医学や金本位制を持ち、また、臓器移植を含む医療技術も誇ります。物語は、古橋がこの独立騒動に巻き込まれながら、様々なキャラクターと出会い、彼自身の成長も描かれています。

登場人物

本作には多様なキャラクターが登場します。主人公の古橋健二は、うだつの上がらない小説家であり、独立騒ぎに翻弄されつつも、吉里吉里国での地位を確立していきます。彼の編集者佐藤や、少年警官イサム、空港の管制官アキラなど、様々な背景を持つ人物たちが物語を多彩に彩ります。

作品の特徴

『吉里吉里人』は、単なるフィクションにとどまらず、社会に対する皮肉やユーモアを交えています。古橋の視点を通じて物語が語られ、その過程で日本社会への批判や、地域独立の意味について考えさせられます。また、吉里吉里国の成立が、実際の地方自治体の独立運動に影響を与えたという点も興味深いです。

最後に

この作品は、社会的背景や言語、文化について深く考察されており、井上ひさしの独特の視点とユーモアが詰まった一冊です。やがてこの作品は多くの読者に影響を与え、吉里吉里という地域の文化や言語が注目を集めるきっかけとなったと言えるでしょう。

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