吊下式ソナー

吊下式ソナーとは

吊下式ソナー（つりさげしきソナー）は、哨戒ヘリコプターに搭載され、水中の音響探査を行うために送受波器を水中に吊り下げる装置です。これによって、潜水艦の探知やその他水中目標の捜索が行えます。この技術は1945年にアメリカ沿岸警備隊が実験を行ったことが始まりで、以降、多くの改良が加えられてきました。

歴史的背景

吊下式ソナーは、対潜任務に特化した哨戒ヘリコプターの発展と共に進化しました。1945年にHOS-1に搭載されたのは、ヘリコプターを対潜戦に応用する第一歩でした。1950年代には、シコルスキーS-55型でのテストが行われ、1952年にはAN/AQS-4ソナーを搭載したHO4S-1哨戒ヘリコプターが登場します。これが、対潜任務専用のヘリコプターの先駆けとなりました。

その後、1955年にはシコルスキーS-58をベースにしたHSS-1が本格的な哨戒ヘリコプターとして部隊に配備され、この技術は更に進化していきました。

設計の特徴

吊下式ソナーは、ヘリコプターのホバリング時にソナーケーブルを介して水中に送受波器を吊下して利用します。機内には、これらを操作するための巻上機、信号処理装置、表示装置が配置されています。この設計には、限られたスペースの中で機器を小型化し軽量化するという課題が伴います。

近年では、潜水艦の探知が難しくなっており、低周波数での探知が求められていますが、これは送受波器の大型化と相反する問題を生じさせます。このため、二者を両立させるための技術革新が求められているのです。アメリカのベンディックス社とイギリスのBAE社によって開発されたHELRASは、送受波器に開傘展張機構を導入し、探知距離を劇的に向上させることに成功しています。

運用上の課題

吊下式ソナーの深刻な課題としては、探査の際にヘリコプターの動きが制約され、吊下・揚収中はソナーが使用できない点があります。このため、最低でも2機でのペア運用が好ましいとされています。対するソノブイは多数同時に展開可能ですが、ヘリコプターは搭載数に限界があるため、運用面での選択肢が異なります。

吊下式ソナーの利点は、その再利用が可能である点や、高精度な探知情報を得やすい点にあります。近距離であれば、魚雷と同時に攻撃することも可能で、命中率が向上します。

軍事的運用

アメリカ海軍では、同じSH-60ヘリコプターを使い分けており、水上戦闘艦向けにはソノブイを、航空母艦近くでは吊下式ソナーを使う運用がなされています。その後開発されたMH-60Rは、両方式に対応しながらも、任務に応じて適切な機材を使う柔軟性を持っています。

また、AN/SQQ-89|AN_SQQ-89A(V)15のようなシステムは、様々なソナー情報を統合することで、多様な状況に対応できる運用を実現しています。

結論

吊下式ソナーは、対潜戦の重要な一部であり、その進化は続いています。技術的な課題に取り組むことにより、より高い探知能力を持つシステムの開発が期待されています。

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