同型矢倉

同型矢倉：相矢倉における鏡像の戦い

同型矢倉とは、将棋の相矢倉において、先手と後手がほぼ対称的な陣形を構築して戦う戦型です。 これは、▲4七銀-3七桂と△6三銀-7三桂という配置を基本とし、両者が互いに鏡像のような陣形を作ることで特徴づけられます。

将棋において、両者が同一の陣形になる局面は「同型」と呼ばれ、相矢倉以外にも角換わりや相振り飛車などで見られます。同型という表現は、陣形が同一であることを示す「同形」と混同されることもありますが、将棋界では必ずしも厳密な使い分けがされているわけではありません。

同型矢倉は、序盤の偶発的な局面だけでなく、戦術的な意図をもって採用されることも少なくありません。特に、2010年代後半からは土居矢倉をベースとした同型矢倉も出現し、プロ棋戦でも見られるようになりました。永瀬拓矢七段と千田翔太七段、高見泰地七段による対局がその好例として挙げられます。

同型矢倉の戦術的意義と歴史

矢倉戦では、相総矢倉や脇システムなど、両者の陣形が類似する展開は頻繁に発生します。しかし、同型矢倉は、先に仕掛けた方が不利になる傾向があると考えられています。脇システムでは角交換による損失が発生しやすく、相総矢倉（千日手矢倉）は長年、千日手にならないための打開策が模索されてきました。

同型矢倉における代表的な戦型として、▲4五歩からの攻めがあります。中原誠九段編『山田道美将棋著作集』では、山田道美九段が▲4五歩からの様々な変化を示しています。 例えば、▲4五歩△同歩▲3五歩△同歩▲同角という手順や、▲4五歩△同歩▲3五歩△同歩▲4五桂という手順などが挙げられます。これらの手順は、先手の積極的な攻めと、後手の粘り強い受けという展開を特徴としています。

山田道美九段は、▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲4六銀という手順も示しており、これは後手に歩を渡すものの、実戦例も多く見られる展開です。 さらに、▲2四歩による角交換から、複雑な攻防が展開されるパターンも存在します。この角交換では、先手は飛車を深く引いて再攻撃を仕掛け、後手は歩切れの弱点を抱えながら対応することになります。

これらの指し方において、先手は玉頭への継ぎ歩を狙う展開を目指しますが、後手も粘り強く対応することで、先手にとって容易な戦いとは言えません。

著名棋士と同型矢倉

同型矢倉は、多くの棋士によって研究されてきました。特に米長邦雄永世棋聖は同型矢倉を得意戦法としており、数多くの対局でこの戦型を採用しています。米長九段は、同型矢倉で先手番では千日手を目指したとしても、相手に潰されてしまうリスクを強く意識していました。そのため、積極的な攻めを重視し、手待ちで負けるくらいなら引退も考えるほどの覚悟で臨んでいたと語られています。

米長九段は、1979年の京都「将棋まつり」席上対局や1980年の第36期棋聖戦第四局などで同型矢倉を駆使して勝利を収めています。 その後も、様々な棋戦で同型矢倉を指し続け、その戦術的な深さを示しました。

同型矢倉の未来

同型矢倉は、将棋界において長く研究され続けてきた戦型です。2010年代には、米長流からの変化として新たな戦法も出現しており、今後もその発展が期待されます。 その複雑さと奥深さから、今後も多くの棋士によって研究され、新たな戦術が生まれる可能性を秘めていると言えるでしょう。 今後も同型矢倉の動向に注目が集まりそうです。

もう一度検索