脇システム

脇システム：相矢倉における現代的な戦法

脇システムは、将棋の戦法の一つで、相矢倉で用いられる独特の戦術です。古くから存在する戦法ですが、特に脇謙二九段が深く研究し、実践したことからこの名が付けられました。

基本的な展開

相矢倉の序盤、後手が△6四角と角を繰り出すと、先手は▲4六角と応じます。両者の角が睨み合う形となり、その後、先後ほぼ対称的な駒組みが進んでいきます。

この局面から、脇システムでは主に以下の3つの攻撃手段が用いられます。

1. 角交換: 角を交換して、同形のまま相手に手を渡す展開。
2. ▲3五歩: 端歩を突き出して、相手の陣形を崩していく積極的な作戦。
3. ▲2六銀からの棒銀: 銀を2六に繰り出し、棒銀という強力な攻撃形態を形成します。

高度な戦術と研究の深さ

脇システムは、非常に研究が進んだ戦法として知られています。多くの棋士が詰みまで研究していると言われるほどであり、その深さは計り知れません。特に、三浦弘行九段のような研究熱心な棋士が得意とする戦法の一つです。

藤井流早囲いとの関係

藤井猛九段は、脇システムと片矢倉（天野矢倉）の相性の良さを発見しました。この組み合わせにおいて、▲2五歩を早めに突くなどの工夫を加えた戦法が「藤井流早囲い」として確立されています。

2010年代後半の矢倉戦術の大改革と脇システム

2010年代後半、居角左美濃急戦の発展により、矢倉戦術は大きな変革を迎えました。しかし、その中でも脇システムは依然として大きな存在感を示しています。その理由は、後手の角を使った急戦を防ぐために、先手が最速で2筋の歩を2五に伸ばし、後手に3三銀と受けさせるという狙いがあり、脇システムはこの早めに突き越した2五の歩を活かせる戦型だからです。先手は、この歩を起点に攻撃を仕掛け、優位に立つことを目指します。

現代将棋における重要性

脇システムは、その深い研究と柔軟性から、現代将棋においても主要な戦法の一つとして位置づけられています。相矢倉を得意とする棋士にとって、必須の戦術と言えるでしょう。今後も、さらに研究が進み、新たな展開が生まれる可能性を秘めた、魅力的な戦法です。

参考文献

* 脇謙二『単純明快矢倉・脇システム』毎日コミュニケーションズ、1994年、ISBN 978-4895636148

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