名もなき毒

名もなき毒

『名もなき毒』は、著者宮部みゆきの杉村三郎シリーズ第2弾として、2006年に初出版された長編推理小説です。本作は、前作『誰か Somebody』から約3年の歳月を経て執筆され、現代の社会問題を背景にしたスリリングな内容が展開されます。

作品概要

本書は、特に北海道、中部、関東地方での連載を経て、幻冬舎より単行本として発行されました。連載期間は2005年3月から2006年12月までで、最終章は書き下ろしとなっています。『名もなき毒』は、数々の新聞に連載され、2007年には吉川英治文学賞を受賞。さらには、2013年にドラマ化もされ、多くの人々に親しまれています。

物語は前作から約1年後を舞台にしており、登場人物たちに直面する悪意と連続無差別毒殺事件が交錯する複雑なストーリーが展開します。また、土壌汚染やシックハウス症候群といった現代社会の問題も取り入れられています。特に藤山一郎の歌謡曲『丘を越えて』の要素がストーリーの終盤で重要な役割を果たします。

あらすじ

物語の中心にいるのは、今多コンツェルン会長の娘婿である杉村三郎です。彼は、コンツェルングループ広報室に編集者兼記者として勤務しています。広報室は、アルバイトの原田いずみに悩まされており、彼女を解雇する決断を下します。しかし、いずみは「同僚たちからのセクハラや嫌がらせ」に訴訟を起こすと脅迫する手紙を会長に送り、三郎はその対応に迫られます。

三郎は、いずみの過去を調査し始める中で、私立探偵の北見一郎と出会います。また、連続毒殺事件の被害者の娘である古屋暁子と、その娘美智香とも知り合います。彼女たちは事件によって家族が疑われる苦境に置かれており、三郎は彼女たちに寄り添いながら、事件の真相解明に取り組みます。

一方、いずみの悪意は広報室全体に影響を及ぼし、次第に三郎を標的にするようになります。いずみは過去のトラウマを持ちながらも、更なる問題を引き起こし、三郎の職場や身の回りに混乱をもたらします。最終的に、三郎はこの二重の闘いに挑み、真実を掴み取るために奔走します。

登場人物

• - 杉村三郎: 主人公で広報室の記者。家族や同僚との関係に悩みながら真実に迫る。
• - 今多嘉親: 今多コンツェルンの会長で、三郎の義父。
• - 杉村菜穂子: 三郎の妻で、嘉親の娘。
• - 園田瑛子: 広報室の室長兼編集長。
• - 谷垣: 広報室の副編集長で経験豊富なベテラン。
• - 河西: 入社5年目の若手社員。
• - 北見一郎: 私立探偵。
• - 古屋暁子と美智香: 毒殺事件の被害者の家族で、物語に重要な役割を果たす。
• - 原田いずみ: トラブルを引き起こすアルバイト。

このように『名もなき毒』は、社会問題を交えた緊迫したストーリーと、深いキャラクター描写が魅力の作品です。ミステリー小説としてだけでなく、人間ドラマとしても楽しめる内容になっています。

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