名古屋市交通局3000形電車 (軌道)

名古屋市交通局3000形電車

名古屋市交通局3000形電車は、名古屋市が所有していた路面電車で、特に連接構造が特徴的です。これは、2つの車体が連結され、3台の台車を持つデザインになっています。この車両は、1944年3月に戦時中の工員の輸送のために特別に生産されました。製造は木南車輌によって行われ、全体で10編成が造られました。

概要

この車両は、2600形の後継として位置づけられたもので、低床型かつ間接制御方式で設計されましたが、戦時中の諸事情により、電気部品が揃わず、旧型の部品を再利用して完成されました。その後、この車両は戦中・戦後を通じて、大きな収容力を活かして運行されました。

車体形式は、側面に1D3D3という窓配置があり、2両が背中合わせで組み合わさる形になっています。また、張り上げ屋根を採用し、前面は1400形のデザインを踏襲していますが、特有の「木南スタイル」という形状であり、深いカーブを描いたデザインが印象的です。方向幕の上には小型の水切りがついており、外見は2600形とは異なり「海坊主」と呼ばれるような印象は持たれていません。既存の前灯は戦後に移設され、前面中央の窓下に設けられていました。

車内の設計は、中央に低床型の連接台車を採用しているため、フラットな内部空間が実現され、窓の高さも均一で見やすい造りとなっています。ただし、出力としては50PSのモーターを2基装備していますが、これは12m級のボギー車と同程度であり、全長18m級の車両にしては非力とも言えます。秒速2000形とは異なり、本車両は車番の付け方が独特で、連結位置を示すアルファベットはなく、2両が一組で同じ車番を持っています。また、集電装置にはビューゲルが使用されています。

運用

この3000形電車は、初めは池下車庫に実際に配置され、特に輸送需要が高かった栄町線で有効に活用されました。その後、池下車庫の廃止に伴い、稲葉地車庫に全車が転属され、引き続き同線での運行が行われました。しかし、1963年3月に地下鉄東山線が東山公園まで延伸開業されたことで、栄町線の乗客数が減少し、再編成が必要となりました。その結果、全車が沢上車庫に転属され、南北幹線の熱田線や大江線で運行を続けました。

昭和40年代に入ると、名古屋市交通局の路線縮小が進行し、運用範囲も制限されていき、1967年には3009号が、1968年には3010号が廃車されました。残った8両は高辻車庫に再度転属され、最後の運行を行いましたが、その構造上、ワンマン化改造が難しかったため、1970年には全車が廃車されました。

保存車・譲渡車

3000形電車の中で、3003号車は1970年に名古屋市科学館で保存され、外部展示ながら、定期的な手入れのおかげで非常に良好な状態を保っていました。その後、1986年に同館の増築工事によって交通局に返還され、地下鉄鶴舞線の日進工場で保管されていましたが、現在は2000年にオープンした「名古屋市市電・地下鉄保存館（レトロでんしゃ館）」で保存され、公開されながら一般の人々が立ち入ることも可能です。

車両諸元

• - 車長：18000mm
• - 車高：3410mm
• - 車幅：2334mm
• - 定員：150名
• - 自重：20.0t
• - 台車：木南バー型
• - 電動機：50PS（36.8kW）×2
• - 製造：木南車輌製造

脚注

1. 日本路面電車同好会名古屋支部編著 『名古屋の市電と街並み』 トンボ出版、1997年

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