名古屋市天白図書館

名古屋市天白図書館は、愛知県名古屋市天白区横町に位置する名古屋市図書館の分館です。地域住民の要望を反映した住民参加型の図書館として建設され、開館当時から多くの人に利用されています。

蔵書と貸出状況

2014年度のデータによると、蔵書数は93,561冊、貸出数は604,817冊に上ります。内訳は、一般和書が62,027冊、児童書が31,501冊となっており、幅広い年齢層に対応した蔵書構成となっています。また、新聞30紙、雑誌218誌、視聴覚資料2,101点（紙芝居756組、CD762枚、カセットテープ334巻、ビデオテープ78巻、ビデオディスク138枚、CD・DVD-ROM33枚）を所蔵しています。

特色

天白図書館は、建設設計段階から住民が参加した点が大きな特徴です。これは、当時の名古屋市政が推進していた住民参加型の市政の一環として実現しました。特に、開館当初から漫画の蔵書が充実しており、住民の要望に応えたものでした。図書館自身も「『マンガのある図書館』として全国的に知られている」と自称していますが、一部研究者からは、開館当初ほどの話題性はないとの指摘もあります。

沿革

開館前

天白区には図書館が開館する以前、地域住民はバスで1時間かけて瑞穂図書館や鶴舞中央図書館まで行く必要がありました。そのため、主婦などが自宅や集会所を解放して運営する「子ども文庫」と呼ばれる私設の小さな図書館が各地に存在していました。「天白によい図書館をつくる会」は、これらの子ども文庫の運営者を中心に設立され、住民参加による図書館建設運動を推進しました。また、この運動とは別に、「天白区を住みよくする会」も図書館設置の要望活動を行っていました。

設立準備

1974年12月、「天白によい図書館をつくる会」の設立準備会が発足。
1975年2月、「天白によい図書館をつくる会」が正式に発足し、図書館に関する勉強会が毎月のように開催されました。
1976年4月30日、「天白によい図書館をつくる会」が市教育長と鶴舞中央図書館長に「天白図書館に関する要望書」を提出。同日、図書館用地として天白町大字島田地内の土地が購入されました。
1977年4月1日、天白図書館設置準備のため、職員に辞令が交付されました。
1977年6月には、住民の要望を把握するため、「希望の小箱」が設置されました。この目安箱への投書から、特に子供からの要望が多かった漫画の所蔵が決定しました。選書は、毎日新聞に掲載された「子どもにすすめられる100冊」を参考に進められました。
1977年11月8日、準備室が鶴舞中央図書館内から天白図書館内に移転しました。

開館後

図書館開館後、一部の子ども文庫は廃止されましたが、多くは存続し、図書館との棲み分けが行われました。また、集合住宅との併設は、名古屋市図書館として初の試みであり、利用者から先進的な事例として好意的に受け止められました。
1977年 11月18日に開館式が行われ、翌19日に開館しました。開館を待ち望んだ住民で満員となり、開館初日には本を借りられずに帰った人が800人もいたというエピソードが残っています。この日の入館者は3,954人に達しました。
1984年7月8日、住居表示の実施により、所在地が横町701番地となりました。

サービス

図書館の利用は誰でも可能ですが、館外貸出には利用者登録が必要です。利用者登録は愛知県在住・在勤・在学者に限られています。

館外貸出

図書は14日間で6冊まで、紙芝居は3組まで、カセットテープ・CD・DVDは3点まで、紙芝居舞台は1台まで借りることができます。返却は、紙芝居舞台以外は、名古屋市図書館の各館で可能です。ただし、貸出点数は名古屋市図書館全館で共通して計算されます。

開館時間

火曜日から土曜日: 9時30分から19時00分
日曜日・祝日: 9時30分から17時00分

休館日

月曜日（祝日の場合は開館し、翌日休館）
毎月第3金曜日（祝日の場合は開館）
年末年始（12月29日から1月4日まで）

交通アクセス

名古屋市営地下鉄鶴舞線植田駅下車、南へ約800メートル。
名古屋市営バス天白巡回系統「天白図書館」停留所下車、北へ70メートル。
名古屋市営バス幹新瑞1号系統・八事11号系統「石薬師」停留所下車、北へ500メートル。
名古屋市営バス鳴子11号系統・植田11号系統「坂海戸」停留所下車、東へ550メートル。

参考文献

「天白調査」調査研究チーム編『天白図書館と地域社会』名古屋市天白図書館、1979年3月31日。
名古屋市天白図書館編『新たな飛翔に向けて―天白図書館10年史』名古屋市天白図書館、1988年3月31日。
名古屋市天白図書館編『更なる飛翔に向けて―天白図書館20年史』名古屋市天白図書館、1998年3月。
内記稔夫、秋田孝宏「日本における漫画の保存と利用」（PDF）『カレントアウェアネス』第293号、国立国会図書館、2007年9月。
薬師院はるみ『名古屋市の1区1館計画がたどった道―図書館先進地の誕生とその後』八千代出版、2012年10月。ISBN 978-4842915852。
薬師院はるみ「第4章 1区1館と住民運動第2節新区の誕生と住民参加:新しい理念の登場」『名古屋市の1区1館計画がたどった道―図書館先進地の誕生とその後』、128-134頁。
薬師院はるみ「第4章 1区1館と住民運動第4節住民参加型の図書館その2:天白図書館の場合」『名古屋市の1区1館計画がたどった道―図書館先進地の誕生とその後』、143-150頁。
* 名古屋市鶴舞中央図書館 (2014年7月). “名古屋市立図書館年報平成26年版” (PDF). 2015年3月11日閲覧。

外部リンク

公式ウェブサイト

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