名古屋市立第二斎場

名古屋市立第二斎場：老朽化と需要増加に対応した新たな火葬施設

名古屋市は、人口増加と高齢化に伴い、火葬場の老朽化と火葬需要の増加という課題に直面していました。1915年開設の八事斎場は、設備更新が行われていましたが、火葬件数の増加と災害への備えから、新たな火葬場の建設が不可欠となりました。

特に、八事斎場は市内だけでなく市外からの利用者も多く、年間の火葬件数は全国最多を誇り、ピーク時には一日最大92件の火葬を行う盛況ぶりでした。そのため、それまで休業日であった友引日も営業するなど、対応に追われていました。

こうした状況を受け、名古屋市は1988年の「名古屋市新基本計画」で第二斎場の整備方針を打ち出し、その後、具体的な計画策定に着手しました。しかし、建設候補地の選定には地元住民との協議など、様々な困難がありました。

2003年、港区東茶屋への建設計画が発表されると、地元町内会から反対運動が展開されました。しかし、関係各所との協議を経て、2005年には地元住民の賛成多数を得て、建設に向けて大きく前進しました。

その後、土地区画整理事業を経て、2007年には第二斎場の建設予定地を含む約148ヘクタールの都市計画が決定しました。第二斎場は、5.1ヘクタールの敷地に、30基の火葬炉を備えた鉄筋コンクリート2階建ての建物として建設されました。延べ面積は約1万5000平方メートルに及びます。

2015年7月、100年ぶりの新たな火葬場として名古屋市立第二斎場が開場しました。各火葬炉には個室が設けられ、遺族が故人との別れを静かに送れるよう配慮された設計となっています。これは、従来の八事斎場のホールに面した構造とは大きく異なります。

第二斎場の完成により、名古屋市の火葬能力は飛躍的に向上しました。一日約150件の火葬に対応可能となり、南海トラフ巨大地震などの大規模災害時にも対応できる体制が整いました。建築デザインも高く評価され、中部建築賞を受賞しています。

開業後1年経過時点では、近隣の港区や中川区からの利用者が多く、市全体の利用率は約3割と報告されています。また、八事斎場とは異なり、宮型霊柩車の乗り入れはできません。

利用料金は、八事斎場と第二斎場で同一ですが、名古屋市民と市外住民では料金が異なります。料金体系は、「死体火葬許可証」または「死胎火葬許可証」に記載された住所地に基づいて判断されます。

第二斎場は、公共交通機関では南陽交通広場または名古屋市営バスの「南陽大橋西」停留所が最寄りです。アクセス面についても、利用者の利便性を考慮した設計となっています。

名古屋市立第二斎場は、単なる火葬場にとどまらず、地域住民のニーズに応えると共に、災害対策においても重要な役割を担う施設として、名古屋市の都市基盤を支える重要な拠点となっています。今後も、その役割はますます大きくなっていくでしょう。

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