名古屋電気鉄道トク1号電車

名古屋電気鉄道トク1号・トク2号電車

名古屋電気鉄道トク1号電車（SC I）とトク2号電車（SC II）は、1913年に名古屋電気鉄道が導入した4輪単車構造の貴賓車です。これらの電車は、名古屋の郊外鉄道路線開通時に特別な役割を果たすために設計されました。トク1号は火災により失われましたが、トク2号はその後も貴賓車として活躍し続けました。

車両の仕様と特徴

トク1およびトク2は、他の電車とは異なる独自のデザインが施されています。記号番号はそれぞれトク1（SC I）とトク2（SC II）ですが、車両番号はローマ数字の「I」と「II」で表示されます。このことは、両車の特別な地位を示しています。トク1号は火災で消失し、その後トク2号のみが残ったため、貴賓客専用として運用されました。

導入の経緯

名古屋電気鉄道では、1912年に新たな電車168号形が導入され、その一部を貴賓車に改造する計画が立てられました。このプロセスの中で、トク1号とトク2号が製造され、希少な貴賓車としての役割を担うことになりました。これらの電車は、高級感ある内装と装飾が施され、当時の貴族や政府関係者を運ぶための特別な仕様となっています。

車体の設計

トク1号・トク2号の車体は木造で、オープンデッキ構造が特徴です。車体の寸法は、長さを30フィート11インチ、幅を7フィートとし、乗降口の幅も調整されています。車体の前面には三枚の窓が均等に配置され、その中央には前照灯が整然とつけられています。側面には広幅の窓が5枚配置され、窓上部には明り取り窓が設けられています。屋根は二重構造で、両脇には追加の明り取り窓が設置されています。

内装と装備

車内はそれぞれ異なる仕様となっており、トク1号はソファー席と中央に楕円のテーブルが設置され、特に高級感を醸し出しています。これに対し、トク2号はロングシートが採用されています。全体のデザインには装飾彫刻が施され、高級感を強調しています。

主要機器は168号形と共通で、英国製の台車とブリティッシュ・ウェスティングハウス製の電動機が搭載されています。これにより運行時の性能と安全性が保障されています。

運用の歴史

トク1号・トク2号の運用は、特別な儀式や客輸送に利用され、さらには名古屋電気鉄道の歴史において重要な役割を果たしました。1915年には皇太子が名古屋に訪問した際にこれらの車両が使われたという記録も残っています。また、名古屋電気鉄道が直面した火災による影響で、トク1号は焼失し、残るトク2号は一般運用に移行することになり、その結果デシ550形551として改称されました。

1940年には一旦廃車扱いとなりましたが、戦争中の輸送需要の増加により再整備され、モ40形（初代）41として復帰しました。1949年にはさらに形式が改称され、モ85形85となり、1960年まで名古屋鉄道の最後の旅客用4輪単車として運用されました。

結論

名古屋電気鉄道のトク1号とトク2号電車は、日本の鉄道史において特別な位置を占めており、その独自のデザインや貴賓車としての役割を通じて、名古屋鉄道の発展に多大な影響を与えました。トク2号の運用は、名古屋の交通史における重要な要素として長く記憶されていくでしょう。

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