名鉄デキ900形電気機関車

名鉄デキ900形電気機関車の概要

名鉄デキ900形電気機関車は、かつて名古屋鉄道で運用されていた直流用の電気機関車であり、特にその存在が非常にユニークなものでした。902形は1,500Vの架線電圧にしか対応しておらず、実際には901号機の1両のみが製造され、様々な事情から他の形式とは異なる独自性を持っています。

制作の背景

1944年、第二次世界大戦中に増加した貨物輸送の需要に対応するために、名古屋鉄道は日本鉄道自動車工業においてデキ900形を製造しました。この電気機関車は、35トンの重さを誇り、凸形車体の特徴を持っています。デキ900形は、当時の他の類似機関車同様に、日本鉄道自動車工業によるデザインで制作されましたが、いくつかの重要な点で他機とは異なるアプローチがなされています。

機械的特徴

デキ900形はその設計において、他の事業者向けに新製された機関車と同様の主要寸法が用意されていますが、特筆すべきはその重量です。他の電気機関車が約25トンから30トンであったのに対し、デキ900形は35トンのクラスに区分され、これにより粘着性能が向上することを狙っています。

機器面では、戦時中の資材不足により、幾つかの部品が中古品から流用されました。主制御器や台車などの核心部品は、国鉄のモハ1形電車からの廃品が使われています。主電動機については、ゼネラル・エレクトリック製のものが使用され、出力は93.3kW (約125HP)となっています。また、制御器にはウェスティングハウス272-G-6が採用され、台車は省形釣り合い梁式のTR14を装備しています。

運用の履歴

デキ900形は、導入後に他の電気機関車と共に貨物運用に従事しました。特に、晩年には主に築港線で客車列車の牽引を行っていました。これによって多岐にわたる輸送ニーズに対応し、名古屋地域の交通を支える役割を果たしました。

しかし、1965年11月にデキ900形は廃車され、その後解体処分となりました。これにより、名古屋鉄道の貴重な歴史的存在が一つ消えてしまいましたが、その特異なデザインと機能性は今でも多くの鉄道ファンに記憶されています。

参考文献

• - 『鉄道ピクトリアル』 鉄道図書刊行会
• - 渡辺肇 「私鉄車両めぐり(27) 名古屋鉄道 終」 1957年2月号
• - 渡辺肇・加藤久爾夫 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 終」 1971年4月号
• - 清水武・田中義人・澤内一晃『名古屋鉄道の貨物輸送』フォトパブリッシング、2021年
• - 清水武・田中義人『名古屋鉄道車両史 上巻』アルファベータブックス、2019年

名鉄デキ900形電気機関車は、名古屋鉄道の重要な歴史、特に戦中の貨物輸送需要を背景にした存在であり、貴重な資料となるでしょう。

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